■中国の近未来に対して保険を掛ける
みなさんこんにちは。
数年前から中国の経済成長に陰りが見え始めました。
直近四半期(1〜3月期)のGDP成長率は6.8%で、
かつて10%成長が当たり前だった高度成長期と比べると、
ずいぶん物足りない数字です。
中国の社会を見ても、アチコチ問題点が目立つように
なってきました。
例えば一人っ子政策の影響で高齢化が急速に進み、
労働人口は既に減り始めました。
にもかかわらず社会保険制度は未熟で、
これから迎える高齢化時代への準備ができていないように見えます。
きっと軍備の拡張やインフラ投資を優先させ、
社会福祉や年金制度の整備を後回しにしてきたツケでしょう。
いわゆる「豊かになる前に老いる」というやつです。
あいかわらず格差も広がる一方で、内陸部の農村に住む国民には、
不安や不満が広がっているようです。
とても社会主義の国とは思えません。
中国史を振り返りますと、歴代王朝の交代は、
たいがい農民による反乱か異民族の侵入がきっかけです。
このままの状態を放置すれば、
歴代の王朝と同じ道をたどるかもしれません。
シャドーバンキングの問題も解消に向かってるようにはみえません、
地方政府やその別同部隊が抱える隠れ借金は、
近い将来維持不能に陥る懸念があります。
このようにみてまいりますと、
中国はとても順風満帆とはいえないことがわかります。
では中国経済は早晩行き詰まり、
ふたたび長い長い停滞期に入ってしまうのでしょうか。
僕にはそうは思えません。
確かに深刻な問題を中国が抱えているのは事実だと思いますが、
それは中国に限ったお話しではありません。
アメリカはほんの一握りの成功者が莫大な富をため込み、
冨の集中に歯止めが効かなくなってしまいました、
ポピュリズム政権の誕生はこの現象と無縁ではないと思います。
中国の経済成長率は6%代半ばですが、
こちらは2%台に過ぎません。
ヨーロッパはさらに低成長ですし、
アメリカ同様ポピュリズムや極右の台頭によって、
社会をが分断されつつあります。
統一通貨ユーロもいつまで持つかわかりません。
日米欧のなかで最も深刻な悩みを抱えているのは、
日本かもしれません。
財政は維持不能なレベルが近づいているように見えますし、
経済の潜在成長率は1%ほどに過ぎません。
にもかかわらず先日閣議で決まった「骨太の方針」によれば、
2025年のプライマリーバランスの黒字化達成は、
「3%の経済成長」を前提にしているそうな・・・
今のところ日米欧のなかで、もっとも社会が安定しているように
みえますが、そのために競争や成長がないがしろにされては
いないでしょうか。
この状態が続くようなら、安定した社会を維持しながらも、
世界における経済的な地位はもっと下がってゆくのかも
しれません、まるで低体温症です。
このように世界を見渡してみますと、決して中国ばかりが
問題を抱えているわけではなく、どの国にもそれなりの
問題があることがわかります。
大切なのは問題があるかどうかではなく、
その問題にどう対処できるかではないでしょうか。
中国の場合経済成長が鈍化したいっても、まだ(公称)6%台を維持しています、
しかも一党独裁ですから、日米欧と違い機敏に危機対策をとれるでしょう。
ですから仮ににシャドーバンキング問題が顕在化したとしても、
例えばわが国で1990年代に起きた住専問題や金融機関の不良債権問題
のように、先送りしてさらに傷口を広げてしまうということは
ないと思います。
10年後まだ習近平さんが政権を維持しているかどうかは
わかりませんが、少なくとも今の共産党の組織や人材をみれば、
たいへんクレバーで危機管理に長けているようにみえます、
すくなくともアメリカや日本の現政権よりは。
社会保障制度は中国の将来にとって大きな問題になると思いますが、
予想される成長率(4%程度か)を前提にするならば、
少なくともむこう10年や20年は維持できるのではないでしょうか。
このような事からさまざまな問題を抱えながらも、
中国は今後さらに存在感を高めると僕は思います。
ではそのような近未来に、
私たちはどのように順応してゆけばよいのでしょうか。
仮に中国の経済成長率が4%まで下がったとしても、
10年後に経済のサイズは1.5倍ほどにもなります。
金額でいえばGDPの増加額は630兆円ほどで、
今の日本一つぶん以上が増える計算です。
10年後の中国が、そのように拡大した経済規模をよりどころに
何を実現しようとするかはわかりません。
海外との協調路線に転じる可能性はありますが、
場合によっては私たちお隣の住人にとって、
不快な行動をとる可能性は十分あると思います。
今以上に豊かになった中国人が何を持ちたがるのかを考え、
それを先回りして持っておくことは、
このような少し憂鬱な近未来の保険になるのかもしれません。
では今回はこのへんで。
(2018年7月4日)
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