■テールリスクと現物資産
みなさんこんにちは。
皆さんはテールリスクという言葉をご存知でしょうか。
テールリスクは「めったに起きないが、起きると
壊滅的な打撃を受ける出来事」のことです。
正規分布のグラフの広がりきった両端が、
ちょうど動物やトカゲなどの尾っぽに似ていることから、
テール(尾っぽ)リスクと呼ばれるようになりました。
具体的な例を挙げると昭和大恐慌です。
この恐慌は、アメリカの保護主義的な貿易政策が
引き金になったと言われておりますが、例えばわが国の株価は、
危機前の1926年から危機直後の1931年にかけ、
ほぼ半値まで下げました。アメリカに至っては90%
下落です。
もう一つあげるとすれば敗戦後のどさくさで起きた、
日本政府による預金封鎖と新円切り替えでしょう。
政府は敗戦の翌1946年突然銀行口座からの出金を制限し、
その間に今まで使っていた円(旧円)を廃止し、
新しい円(新円)への切り替えを行いました。
当時進行していたハイパーインフレの影響もあり、
政府の借金は一気に解消、逆に現預金を保有していた
国民は財産を失いました、多額の現預金を持っていた
富裕層ほど損失は大きかったといえるでしょう。
さらにもう一つあげるなら、まだ記憶に新しい
リーマン・ショックで、ここでもまた富裕層は株価の
下落によって大きな損失を被りました。
このようなテールリスクは生きている間に何度も起きるものでは
ありませんが、だからといって無視してしまって
よいということでもありません。
例えばいまちょうど起きている米国発の貿易摩擦は、
1929年以降の世界恐慌時の状況と少し似ています。
1946年の預金封鎖時の財政赤字は、対GDP比で約200%でしたが、
これを現在の数字(約230%)は上回ります。
中国経済が目先大崩れするとは思いませんが、
それでも急速に膨らんだ経済が臨界点に達すると、
決まって起きるのはバブルの崩壊です。
テールリスクの現実化は、あるかないかではなく、
いつ、どのような規模や形態で起きるかではないでしょうか。
例えば昭和恐慌時は株価は数年で半分になってしまいましたが、
現金や預金が紙切れになったわけではありません。
リーマン・ショック時も同様で、株やファンド類などは
大きく値を下げましたが、現金や預金、国債の価値は維持されました。
これに対して1946年の預金封鎖では、現預金や国債は
紙切れになりました。
では次にやってくるであろう危機は、
いったいどの程度の規模や形態をとるのでしょうか。
昭和恐慌やリーマン・ショック時のように、
株やファンド類などの大幅な減価でとどまるのでしょうか。
それとも1946年の新円切り替えのように、
現金や預金、国債などが無価値なってしまうのでしょうか。
現預金や国債はいったん無価値になってしまえば、
元に戻ることはありません。
これに対し不動産、貴金属やコインなど現物資産は
それそのものに絶対的な価値があり、決して無価値にはなりません。
いずれ時間の経過とともに経済は必ず正常化しますので、
一時的に価値が減ったとしても、現物資産の価値も復元するはずです。
そこがペーパーアセットと現物資産の最大に違いといえるでしょう。
大切なのは、危機前の自分から危機後の自分に対して、
どのようにして資産を渡すかではないでしょうか。
あらかじめ予想できないところがテールリスクたる所以ですが、
少なくとも過去の事例を見る限り、ペーパーアセットから
現物資産へ資産を移しておくことが、危機管理に有効だったことは
間違いありません。
では今回はこのへんで。
(2018年10月4日)
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