財政破綻への過剰な反応がゆがめる平時のポートフォリオ

みなさんこんにちは。

僕の事務所にはいろんなお悩みをお持ちの方がおいでになりますが、
財政破綻を懸念される方は必ず一定割合いらっしゃいます。

先日も資産を海外に移された方からの相談を受けましたが、
その方はお手持ちの資産の大半を、HSBC香港に預金のまま置かれて
おいででした。

お気持ちはよくわかります。

我が国の財政はご存じのような状態になっていますし、
日銀は政府が発行した国債のうち4割以上も保有するという、
過去に例をみない状態です。

日銀は政府から購入する国債の代金を支払うため、
未曽有のマネーを市場に供給してきました。

このような状態のなか、何も対策をしないほうがむしろ問題で、
万一に備え私たちは資産の持ち方(「ポートフォリオ」)を
変えるべきだと思います。

ただし上記のように大半のおカネを海外に移すことが、
本当に解決策になるのでしょうか。

地理的に分散しておくことは意味がないとは言いませんが、
いまの世界経済はそれほど単純ではありません。

日本の財政破綻や円の希薄化は深刻な問題ではありますが、
日本で起きている現象は先進国共通の問題になりつつあります。

少子化と経済の低成長化、財政の悪化と紙幣の過剰印刷、
貧富の差拡大による社会の分断、民主主義と資本主義経済の限界・・

日本化はすでに世界的な広がりを見せており、
いつ、どこで、何をきっかけに金融危機が再来するか、
もはや誰にも予想ができません。

そのような混沌の世界の中で、
私たちにとって安全な現金の置き場などあるのでしょうか。

このように考えてまいりますと、
私たちは自分たちの資産を守るためには、
単純な地理的分散ではなく、
質的な分散が求められていることがわかります。

つまり現金や預金、債券などペーパーアセットの対極にある資産、
言い換えれば実物資産(Tangible Asset)への分散です。

ただしここで私たちは冷静にならなければなりません、
なぜなら実物資産にもいくつかの問題点があるからです。

たとえば流動性の低さや保管場所、物理的な劣化などです、
さらに債券や株と違ってインカムゲインを生まない点(注)
にも要注意です。

注)不動産を除く

私たちは自らの中で危機感を高めすぎ、
必要以上に実物資産を抱え込んではなりません。

なぜならば、危機対策はその生起確率に応じて行わなければ、
損得勘定が合わないからです。

日本の財政破綻や紙幣の過剰印刷、
ユーロやドルの過剰供給など心配事はありますが、
破綻シナリオへの「のめり込み」は危険です。

有事への過剰な備えによって、
平時の生活が脅かされたり、
私たちの日常が破綻するようなことがあってはなりません。

数年以内に危機に見舞われるようなことがあったとしても、
逆に何も起きず平穏無事な生活が続いたとしても、

どっちに転んでも安心して生きてゆける・・・私たちは、
いまそんなポートフォリオを構築すべきではないでしょうか。

 

では今回はこのへんで。

(2019年11月14日)




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