■アメリカの金利上昇と世界株
みなさんこんにちは。
先週から世界の株価が乱高下していますね、
日本株も今日は随分と下げ29,000円割れです。
直接の下落原因はアメリカ長期金利の上昇ちわれています。
アメリカの代表的な長期金利は10年国債の利回りですが、
今年初め時点では1.0%を切っていました。
2月以降すでにアメリカの長期金利の上昇に対し、
市場は警戒していましたが、その時点でもせいぜい1.4%が
当面の警戒水域だなどと言われていたものです。
それが先週、急騰し一時1.6%を超えました。
では、
そもそもなぜ金利が上がると株が売られるのでしょうか?
実はこのお話し、
そんな簡単ではありません。
私たちが債券を買う場合、いろんな観点から判断しますが、
一つの基準は株の配当と債券の利息を比べ、
どっちがトクかという視点です。
たとえば足元のアメリカ企業の平均的な配当利回りをみますと、
主要500社ベースで1.5%程度となっています。
もし10年債利回りがこの水準を超えてくればどうでしょう。
「インカムゲインが同じなら、価格変動の大きな株を持つより
値動きの小さな債券を持っておこう」
このように考える人が増えてくるはずです。
その結果、株から債券へのおカネの流れが生まれ、
株価は下落いたします。
このような観点でみれば、確かに
・金利の上昇は株価の下落要因
といってよいでしょう。
ただし先ほども申しましたように、
金利と株価の関係はそれほど簡単ではありません。
たとえば長期金利が上がる要因について考えると、
「金利と株価」に関する別の面が見えてきます。
もちろん金利の上昇要因はいくつもあり、
一概に決めつけることはできません。
ただ足元の金利上昇は、
以下のような要因によるところが大きいと僕は思います。
・ワクチン接種の進展
↓
・コロナ終息期待の高まり
↓
・経済の回復期待の高まり→株価上昇
↓
・企業の設備投資や個人の消費拡大への期待
↓
・おカネに対するニーズの高まり予想
↓
・金利の上昇
債券の利子はおカネの借用に対するコストです、
上記のような経路でおカネへのニーズが高まれば、
自然とその借用コスト(=金利)は高まることになります。
このような観点で見れば、
先ほどとは逆に
・金利の上昇と株価の上昇は同時に起きる
となります。
つまり
「金利の上昇は株価の下落を伴うこともあれば逆もある」
このような結論づけていいと思います。
では金利の上昇期に、
株安と株高どっちの目が「より出やすい」のでしょう。
そもそも金利の上昇は経済の活性化によって起きますので、
素直に考えれば株価の上昇を伴う場合のほうが多いといえるでしょう。
たしかに上記のように
金利上昇→配当利回りと比較して株から債券へ流れる→株安
という面もありますが、
経済が回復し企業業績が上がれば、
いずれ配当はさらに増えます、
その結果、やがて債券から株へおカネが戻るという
流れが起きるはずです。
問題は経済の実態(=実力)を超えた速すぎる金利の上昇で、
この場合、「金利の上昇=株価下落」という悪い側面に注目が集まり、
結果的に株価は大きく動揺することになります。
先週から株式相場で起きている下落は、
このように早すぎる金利上昇への不安から、
起きているといってよいのではないでしょうか。
では上記の見立てで考えれば、
日本株や世界の株価は今後どのように動くのでしょう。
この点について考える場合、
根っこにある金利の動向を予想しなければなりません。
コロナ終息見通しや、それを前提にした経済回復は、
かなりの確度で起きると僕は思います。
これに対しアメリカの中央銀行(FRB)や財務省は、
緩やかな金利の上昇に誘導しようとするはずですが、
バーナンキ時代に起きたような過ちを再び犯さないと
は限りません。
昨年のショックによる景気後退が深かっただけに、
世界は過激な金融緩和を進めてきました。
緩和が大きかっただけに、それを中立に戻す過程で、
金利の急騰を招きやすい状態にあるといってよいでしょう。
しかも先日来このメルマガでみてまいりましたように、
世界の株価はすでに、向こう2年ほどの企業業績を先どる形で
値を上げています。
それだけ株価はわずかな金利上昇に対しても、
過剰に反応しやすい状態にあるといってよいのではないでしょうか。
以上のようなことから僕は、
今年の株価は変動の激しさの割には、
それに見合ったリターンを得にくい相場になると僕は思います。
長期投資を志向する皆さんにとっては関係ない話ではありますが、
いちおう頭に入れておかれた方がいいかもしれません。
では今回はこのへんで。
(2021年3月4日)
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