経済が縮小するということ

みなさんこんにちは。

たとえば今から21年前の2000年に、
日本とアメリカそれぞれ以下の価格で
ビッグマックが販売されていたとします。

・日本:300円
・アメリカ:3ドル

あれから21年経ちましたが、
もしこの間、日本の物価がほとんど動いておらず、
アメリカでは年率2%で物価が上がったとすればどうでしょう。

ビッグマックの価格が物価上昇率と同じペースで動いたとすれば、
いま日米それぞれ下記の価格で販売されているはずです。

・日本:300円
・アメリカ:4.5ドル

注)1.02の21乗は約1.52
  従ってアメリカの現在価格は3ドル×1.52≒4.5ドル

僕はビッグマックを食べませんが、
だいたい傾向としてはこんな感じになっているのでは
ないでしょうか。

つまり日本では21年前の価格のまま、
アメリカでは1.5倍に値上がりです。

だとすればこれは日本に住んで生活する私たちにとって、
悪い話ではありません。

なぜならビッグマックは私たちが日々消費するモノやコトの
値段を象徴しており、私たちはそれだけ低コストで生活できる
からです。

実際に食料品や交通費、旅行、レジャー、100円ショップで売っている
ものの値段など、国内で消費するモノやコトの価格は、
この20年というものほとんど変わっていません。

思い起こせば僕がまだ若かった1980年代から1990年代にかけ、
日本をお訪れる外国人の最大の不満は物価高でした。

当時僕は神戸で大学生やサラリーマンをやっていましたが、
街でよくケチケチ外国人に出あったものです。

そのせいか外国人といえばケチというイメージが抜けるまで、
ずいぶん長い年月がかかりました。

それがいまではどうでしょう。

東京ディズニーランドの入場料は世界で最も安くなり。

ワンコインでそこそこ旨いランチが食べられる、
唯一の先進国といわれ。

北海道のスキーリゾートは外国人に買われてしまい、
銀座の中央通りは中国人に占拠され。

今や完全に立場が逆転し、
日本を訪れる外国人から見れば、
日本はすっかり物価が安い国になってしまいました。

日本で住んでいる限り、
物価安は喜ばしいことではありますが、
本当にこんなことでいいのかと不安になります。

モノやコトが安いから企業の利益が少ない。
  ↓
会社が儲からないから社員の給料が増えない。
  ↓
給料が増えないから消費が増えない。
  ↓
消費が増えないから会社は頑張って安売りする。
  ↓
モノやコトが安いから企業の利益が少ない・・・

これは「日本経済の縮小スパイラル」といって
よいのではないでしょうか。

OECDの調べによると、2000年時点で日本人の平均年収は
世界で3番目でしたが、昨年時点では20位まで下がっています。

この間、お隣の韓国は逆に23位から21位まで順位を上げています、
このままいけば数年のうちに逆転されてしまうでしょう。

注)円換算した金額を比較しています

「韓国に抜かれても、
中国やインドネシアの富裕層に抜かれても、
いったいどこに問題があるのか、
私たちは物価が安い日本で幸せに生きているじゃないか」

こう言われれば確かにそのような面もあると思いますが、
もしこの傾向が向こう10年、20年と続くとどうなるのでしょうか。

一番心配なのは税収です。

日本の会社は海外でも営業活動をしていますので、
ある程度の業績拡大は可能だと思いますが、
それでも運輸やレジャー、小売りなど内需で稼ぐ会社も
たくさんあります。

今の財政の規模を維持してゆくために、
法人税率を上げたり、所得税・消費税率を上げるという手はありますが、
やり過ぎると法人の海外逃避を誘発しますし、
消費税もせいぜい20%が限界です。

相続税の引き上げという手もありますが、
そもそも相続税の税収は税収全体の4%ほどしかありません。

これ以上財政赤字を増やさないためには、
歳出を抑えるしかありませんが、
これは行政が提供するサービスの低下を意味します。

その結果、

大きくなりすぎたインフラの規模縮小、
年金や社会保障の水準の抑制、
公的教育の質の低下、

などを受け入れざるを得ないでしょう、
受け入れないなら財政の崩壊です。

経済がスパイラル的に縮小するということは、
このようなことではないかと思いますし、
私たちはこの問題をもっと深刻に受け止める必要が
あると思います。

 

では今回はこのへんで。

(2021年7月27日)




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