アジアから世界に広がる銀貨ドミノ倒し

みなさんこんにちは。

先週僕はアジアで起きた「銀貨相場のドミノ倒し」
についてお話ししました。

中国富裕層のマネーによって、まず「中国コイン」が
値上がりし、その流れが「アジアコイン」に及び、
そしてアジアで最後の砦「日本の円銀」を押し上げたという
お話しでした。

感覚的ではありますが、
中国コインの直近10年ほどの上昇率は2倍から3倍ほどです。

アジアコインはさらに激しく、
ベトナム(アンナン)やチベット、モンゴルなどのなかには、
10倍ほどに急騰した銘柄もあります。

もともとアジアコインはタダのような相場に放置されていましたし、
市場の規模や銘柄も少なかったので、この10倍という数字に
さほどの驚きはありません。

円銀は市場規模が大きく、さらに割安感という点でもアジアコイン
ほどではありませんでした、年初から概ね2倍から3倍の
値上がりは、まあ納得感のある数字だといえるでしょう。

ここまでが先週のおさらいです、
今回はここから先を少し予想してみたいと思います。

世界のコイン市場は一体化しています。

アジアで起きた銀貨のドミノ倒し現象は、
遠からず世界に広がってゆくと僕は思います。

そういう観点で世界を見渡すと、
中南米とヨーロッパの大型銀貨は、
水準訂正の余地が大きいと僕は思います。

まず中南米の8レアルです。

メルマガなので写真が貼れないのが残念ですが
具体的には1700年代の後半から1800年代にかけ、
カルロス3世・4世、その次の王様フェルディナンド7世あたりの
8レアルです。

一昔前までこのあたりは人気がなく、
MSクラスの高状態のコインでも500ドル前後で落札できたものですが、
最近はジワジワ相場帯が上がっており、1000ドルでも競り負けることが
多くなってきました。

おそらく同期代の8エスクード金貨の上昇も影響しているのではないかと思いますが、
アジア発の銀貨相場上昇の影響もあると思います。

そして最後にあげたいのは、
アジアからみて地球の反対側にあるヨーロッパ、
特に1500年代から1800年代にかけての大型銀貨ターレルです。

いま僕の手元に20年前のオークションカタログがありますが、
落札価格をみますと、たとえば以下のような例があります。

・1556年、フェルディナンド1世、1ターレル VF- ⇒10.5万円
・1560年、フェルディナンド1世、1ターレル VF/EF ⇒20万円 
・1615年、マシアス、1ターレル UNC⇒50万円
・1611年、ルドルフ2世、1ターレル UNC⇒12万円
・1712年、カール6世、1ターレル AU⇒46万円

鋳造所の違いなどあって一概には言えませんし、
当時は鑑定済みコインというものがなく比較が難しいですが、
それでもターレルに関しては、当時の落札価格は現在の相場と
さほど変わらないようにみえます。

ちなみにこのオークションの中国コインをみますと、
たとえば袁世凱の1ドル金貨(UNC)が76万円です、
同じく「孫文の三羽鳥(EF)」がたったの2.6万円で落札
されています。

今では「袁世凱の1ドル金貨」は1000万円を超えます、
「孫文三羽鳥」は少し状態が悪いですが、
それでも100万円の値は付くでしょう。

いかに当時のターレルが高かったかがわかります。

さて問題はこれからです。

20年前とほぼ同程度の値が付いているターレルですが、
当時が高すぎたとも言えますし、
逆に今の相場が破格に安すぎるとも言えます。

おそらく実態はその中間ではないでしょうか。

ながらく相場が膠着していただけに、
今のターレルは世界的にみて割安感がプンプンしています、
そこにもってきて中国からやってきた銀貨ドミノ倒しです。

先週僕は世のなか「ヘンなこと」がたくさんあると申し上げましたが、
上記のように今のターレル相場もよく考えてみればヘンです。

ターレルは400年以上も前から造られていますから、
古いターレルのなかには、日本の織田信長や豊臣秀吉の時代の
ものもあります。

しかも残存枚数をみても、中国コインや円銀に比べ
ほんの僅かしか残っていません、未使用クラスになれば
さらに少ないはずです。

しかもデザインは個性的で、
技術的に見ても当時の世界最高峰です、
また文化的、芸術的にもすばらしい趣を持ったコインもたくさんあります。

そんなターレルより、
よほど中国コインのほうが値が張る現在の相場は、
やはりヘンだと言わざるをえません。

このヘンな相場は、
いずれ訂正されるのではないかと僕は思ます。

 

では今回はこのへんで。

(2021年9月16日)




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