■中国発の金融危機はあるか
みなさんこんにちは。
先週から世界の株式市場は荒れ模様です、
テレビ番組でもさかんにやっていますので、
ご覧になったかたも多いのではないでしょうか。
今回の騒ぎは中国恒大集団の経営危機によるものですが、
そこだけを見ていると問題の本質を見誤ることになる
と思います。
この問題の背景には急速に進む貧富の格差に対する、
中国当局の危機感があると思います。
まず昨年、アリババが中国当局に狙い撃ちにされました。
蓄積された顧客情報の多さや、
創業者による政府への批判的な発言など、
共産党と相いれない部分があるからだといわれています。
ホンの一部の富裕層がますますお金持ちになる現状も、
当局は問題視していたようです。
ケ小平時代は「富める人から豊かになれ(先富論)」と、
貧富の差に目をつむって経済成長を優先させましたが、
その副作用として庶民の不満レベルは相当高まっている
のではないでしょうか。
ケ小平さんの「先富論」にかわる目標を、
社会が求めているのは確かだと思います。
そんなタイミングで習近平さんが打ちだしたのは「共同富裕」です。
「共同富裕」を翻訳すれば、
「多少の経済成長を犠牲にしても、貧富の差はこれ以上拡大させない」
という意味でしょう。
来年の秋には5年に一度のビッグイベント共産党大会があります、
習近平さんはそこで3期目就任の承認を得て、
毛沢東と並ぶ長期政権を狙っていると言われています。
そのためにも14億の国民を引き付ける、
社会全体で共有すべき目標が必要だったのでしょう。
アリババやテンセントに続き、
教育産業、不動産業など、「共同富裕」に逆行すると
考えられる産業が規制の対象になりました。
もはや「共同富裕」に逆行する会社は、
習近平政権の下では生きてゆけないと宣言したかのようです。
これは格差拡大の抑止という表の顔があると同時に、
習近平自らの権力基盤を固める裏の顔を持っていると
言ってよいでしょう。
今回の中国恒大集団の経営危機もまた、
単なる一企業の問題ではなく、習近平さんの権力の基盤強化と
密接な関係にあるといえるでしょう。
そのような文脈で中国恒大集団の今後を考えると
どうでしょう。
自ら打ち出したばかりの「共同富裕」に逆行する安易な救済は、
政権基盤を弱めかねず、
まずその選択肢はないでしょう。
実際に中国恒大集団が窮地に陥る現状をみて、
溜飲を下げる国民もたくさんいることでしょう。
一方で破綻させれば世界同時株安です。
中国版リーマン・ショックと言われ、
アメリカやヨーロッパから格好の標的になるでしょう。
それだけではありません、
中国恒大集団に売り掛け金を持っている仕入れ業者のなかには、
連鎖的に倒産する会社も出てくるでしょう、従業員や家族を含めると、
どこまで社会的不安が広がるか想定不能です。
つまり無策のまま破綻させれば、
かえってご自分の権力の基盤が弱まるということです。
共産党大会を1年後に控え、
その選択肢もまたとりにくいはずです。
助ければ党内の立場が弱くなり、
助けず破綻させれば国内外から批判され、
それはそれで3期目が危うくなる。
ご自分自身が作り出したとは言え、
かなりヤバイ状況に追い込まれているのは間違いありません。
では中国当局はどのようにこの問題を処理するのでしょう。
ある人は「救済せずに破綻させる」と予想しますし、
またある人は「救済するしかない」と予想し、
世間の予想は二分しています。
でも僕は上記のような点から考えて、
中国当局の選択肢は一つだけだと思います。
それは破綻させることもなく、
救済することもない、
その折衷策を見つけるということです。
たとえば他社による増資の引き受けや合併などによって、
政府ではなく民間の会社に救済させるという選択肢が、
可能性の一つです。
この場合、
経営者や幹部が相応の責任をとることが前提になります。
あるいは破綻させる一方で、
経済にプラスの影響を与える政策を、
同時に実施する選択肢もあると思います。
以上いずれの選択肢をとった場合でも、
中国恒大集団問題はリーマン・ショックのような予測不能な状態ではなく、
管理された道を進むことになると僕は思います。
そしてこの場合、世界の経済や株価に与える影響は、
限定的だと僕は思います。
では今回はこのへんで。
(2021年9月23日)
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