おカネはどこまで増えるか

みなさんこんにちは。

皆さんは「テーパリング」という言葉をご存じでしょうか。

テーパリングはろうそくの炎が少しずつ消えてゆく様を
表現した言葉ですが、そこから転じて、中央銀行が
市場へ供する資金の量を少しずつ減らしてゆく政策も指します。

アメリカでは今世紀に入って、
三度大きな資金供給を実施しました。

最初はリーマン・ショック直後の2008年の後半、
二度目は欧州債務危機が続く2012年から2013年にかけて、
そして三度目は昨年3月から現在まで、
これはコロナ・ショック対策でした。

この間FRBは市場から大量の国債等を購入し、
その対価として自ら印刷したドル紙幣(注)を市場に
供給し続けてきました。

注)ここでは比喩的に紙幣という言葉を使いましたが、
  実際に紙幣そのものをばらまいているわけではなりません、
  以下も同様です。

ただし無制限に紙幣をばらまくわけにはゆきません。

なぜなら必要以上に資金の供給量を増やしますと、
おカネに対する信頼感が薄まり、通貨安やインフレなど
さまざまな弊害が出てくるからです。

このような事情もあって、
FRBは紙幣をバラマキたいという誘惑と、
逆に紙幣を回収しなければならないという自律の間で、
揺らいできたといえるでしょう。

言い換えれば両者をどのようにバランスさせるか、
FRBはじめ各国の中央銀行の手腕は試されることになります。

バラマキが足りなければ景気の急降下は止まりませんし
逆にバラマキすぎればインフレです、
中央銀行は常に、このような緊張感のなかで金融政策を決めている
といってよいでしょう。

では現在はどのような状況にあるのでしょう。

FRBは昨年3月のコロナ・ショック以来バランスシートを膨らませ、
市場におカネをばらまき続けてきましたが、
ようやくそれも先が見えてきました。

11月からはテーパリングを開始し、
来年の6月にはバランスシートの拡大を停止できる見通しです。

ただしそれでお終いではありません。

アメリカでは政策金利がゼロ(注)、
即ちゼロ金利政策という異常の事態が続いていますが、
次はいよいよゼロ金利状態を解消しなくてはなりません。

注)正確には政策金利の誘導目標は0.0%から0.25%です

テーパリングが終了した先に、
ようやく利上げを始めることになりますが、
上のような時間軸から考えると、
利上げは早くて来年の半ばから後半ということになるでしょう。

一回の利上げが0.25%だとすれば、
2%に引き上げるために8回利上げが必要です、
0.5%刻みで進めても4回です。

昨日発表されたアメリカの消費者物価の上昇率は、
意外なほど高かったので、テーパリングや利上げのピッチは、
少し早まる可能性はあると思います。

それでも過去の利上げペースをみますと、
おそらくアメリカが2%金利に到達するために、
2-3年ほどかかるのではないでしょうか。

以上まとめますと

・2021年11月からテーパリング開始
・2022年前半テーパリング終了
・2022年後半から利上げ開始
・2025年後半に政策金利が2%台に上昇し正常化

という感じではないでしょうか。

つまり今回のコロナ・ショックの後遺症から完全に抜け出し、
FRBの金融政策が正常化するには2025年までかかるということです。

繰り返しになりますが、
今世紀にはいって20年ほどの間、
すでにFRBは以下のように3度紙幣の大量供給を行っています。

2008年のリーマン・ショック後、
欧州債務危機後の2012年、
2020年のコロナ・ショック、

この間FRBの資産規模をみると10倍近くに拡大しています、
言い換えればそれだけ大量のおカネを市場にバラまいて
きたといえるでしょう。

果たしてその2025年まで、
大きなショックもなく平穏な時代が続くでしょうか。

残念ながら私たちは量的緩和とゼロ金利以外に、
有効な対策を持っていません。

もし2025年までに何らかの危機がやってくればどうでしょう、
FRBはまた量的緩和とゼロ金利に戻らざるをえないででしょう。

事実2008年から2020年に至る経緯をみますと、
FRBが本格的な資産規模の縮小に着手する前に、
早々と次の危機はやってきました。

二度あることは三度ある。

そして市場に滞留する紙幣は際限なく増えてゆく
のかもしれません。

私たちがゼロ金利と量的緩和以外の金融政策を見つけるまで・・・

 

では今回はこのへんで。

(2021年11月11日)




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