■ドル円相場の行方を考える
みなさんこんにちは。
ここのところ異常なピッチで円安が進んでいますね、
昨日(4/20)は一時1ドル=129円台半ばまで円安が進みました。
でも近々円安は止まり、
場合によっては一時的に円高に振れるかもしれないと僕は思います。
今回はその理由についてお話ししてみたいと思います
まず足元の円安の原因について、
長期と短期に分けて考えてみたいと思います。
まず長期的な視点からです。
この点に関しては以前からこのメルマガで何度かお話ししてきましたので、
あらためてここで詳しくはお話ししませんが、ひとことで言ってしまえば、
長期的に見た日本の国力低下によるものです。
では短期的な視点から見ればどうなのでしょう。
よく言われるように、日銀のゼロ金利政策が円安を
招いているといってよいでしょう。
でもこれは日銀に責任があるわけではありません。
日銀総裁の黒田さんは2%インフレを目指して、
低金利政策と流動性の拡大を行っているにすぎません。
黒田さんが、2%達成前に
この看板を外すことなどできるはずありません。
であれば逆に、
インフレ2%を達成できたとすればどうでしょう。
この場合、日銀は目標を達成したことになり、
ゼロ金利政策を解除する可能性があります。
その結果、
ひとまず円安は止まり、
場合によっては円高方向への巻き戻しが起こる可能性があると思います。
でも日銀にとってそんな都合よく、
インフレ率2%達成などという状況が訪れるでしょうか。
僕はその可能性は十分あると思います、
まずよく言われる携帯電話料金の影響です。
昨年4月、政府の圧力で新料金プランが設定されましたが、
4月にはその影響によるデフレ効果が剥落します、
なんでもそれだけで1%ほどインフレ方向に振れるといいます。
さらに昨今の商品相場の上昇です。
原油や天然ガス、穀物や木材など、
ロシア問題に起因する物価の上昇は世界に拡散し、
日本でもパンや麺類、食用油に公共料金など、
幅広い分野で値上げが起きています。
足元の消費者物価指数は0.6%(注)の上昇にとどまりますが、
これは2月時点の数字です。
注)生鮮食品を除く
3月からは円安による輸入物価の上昇効果もありますし、
4月には例の携帯料金効果の剥落があります。
4月実績でインフレ率2%が達成できたとしても驚きはありません。
黒田さんが日銀総裁に就任したのが2013年ですが、
それ以来の悲願達成です。
この機会にゼロ金利政策を解除し金融を正常化しなければ、
黒田総裁の任期中にゼロ金利解除はできない可能性が高いでしょう。
ちなみに黒田さんの任期は2023月4月までです。
たしかに足元のインフレ傾向は外部要因で起きており、
本来なら利上げは適切ではないと思いますが、
ここまで円安が進むとそんなことは言ってられません。
本音では日銀は金利を上げたいと考えているはずですし、
夏の参院選にむけ政府も円安を止めたいはずです。
実際のところは、どのような形で、
またどのようなペースで金融政策の正常化に向けて
動き出すのかわかりませんが、市場は先を読んで動きます。
金利の上昇観測⇒日米金利差の縮小観測⇒円高へ反転
という流れが近々起きても何ら不思議はありません。
ただしそれで「円安が止まってめでたしめでたし」
というわけにはゆきません。
相変わらず長い目でみれば円安への圧力は強いですし、
金利の上昇はわが国財政の悪化要因にもなる「諸刃の剣」です。
日銀による6年に及ぶゼロ金利政策によって、
最も恩恵を受けているのは、
日本で一番多額の借金をしている日本政府です。
現在日本政府は1100兆円ほどの国債発行残高がありますが、
国債に対する利払いは8.5兆円(注)に過ぎません。
注)令和3年度実績
仮に金利が1%上がれば、
利払い費は年あたり10兆円増える計算です。
昨年の歳出規模は107兆円ほどでしたので、
これだけで10%近くも歳出が増えてしまいます。
その結果、
財政の悪化⇒円に対する信認低下⇒円安
という円安圧力が新たに加わる可能性があると僕は思います。
今回のメルマガは少し複雑でしたので、
最後にまとめさせていただきます。
1. 近々日本のインフレ率は2%を超える可能性がある
2. その場合、日銀はゼロ金利政策を停止できるかもしれない
3. その結果、日米金利差は縮小し、円は買われる
4. ただしそれも一時的
5. 長期で見れば円安を招く根本的な問題は解決されていない
6. さらに金利の上昇によって政府の国債利払いが増え、
財政の悪化懸念から逆に円安を招く可能性がある
1-3のタイミングは4月の消費者物価指数が発表されるころ、
すなわち5月中ごろだと思いますが、その後(6のように)円安に転じる
タイミングがいつになるかは予測不能です。
タイミングがいつになっても、
円安進行への備えを怠るべきではないと僕は思います。
では今回はこのへんで。
(2022年4月21日)
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