■ジミなアメリカ国債のお話し-1
みなさんこんにちは。
アメリカの長期金利が上がってきましたね。
代表的な長期金利は10年物ですが、
アメリカの10年債利回りは本日(9/1)3.2%にのせています。
直近では2018年の終わりに3.2%越えがありましたが、
いまの3.2%はそれに迫る水準です。
ここまで上がってきますと、
多くの方は魅力をお感じではないでしょうか。
今回はジミではありますが、
国債、とくにアメリカ国債の仕組みと、
購入の損得勘定についてお話ししたします。
いま僕は三菱UFJ証券の「既発外国債券」のページを見ています、
いくつか銘柄があるのですが、そのうち2031年11月15日に満期を
迎える債券を例にとって説明させていただきます。
同社のサイトをみると、
この銘柄につき以下のように書かれています。
・利率1.375%
・利回り2.994%
・販売価格87.07ドル
・償還日2031/11/15
皆さんが一番戸惑われるのは、
「利率」と「利回り」の違いではないでしょうか。
たしかにややこしいですよね
でも「利率」と「利回り」の違いは、
債券投資のキモです。
では順を追ってお話ししましょう、
まず「利率」というのは額面である100ドル(注)に対し、
毎年もらえる利息の割合をさします。
注)アメリカ国債の額面は100ドルです
この債券の利率は1.375%とありますから、
毎年もらえる利息は1.375ドル(注)ということになります。
・1.375ドル(毎年もられる利息)÷100ドル(額面)=1.375%
注)実際には半分にわけ半年にいちど支払われますし、
20%の源泉徴収ぶんも引かれます。
では「利回り」とはいったい何でしょう。
利回りは
「満期までもらえる利息の合計」
に
「債券の本体部分の損得」
を加算して、保有する年数に応じて年率換算した収益率の
ことです。
例えばこの債券は満期まで約9年ありますので、
利息の合計は
1.375ドル×9年=12.375ドル⇒@
です。
ではこの債券の本体部分の損得はいくらでしょう、
上記のようにこの債券の「販売価格」は87.07ドルです、
これに対して満期時に額面通りの100ドルが支払われますから、
本体部分の利益は12.93ドルとなります。
・100ドル-87.07ドル=12.93ドル⇒A
つまり利息の合計(@/12.375ドル)に加え、
債券の本体部分で(A/12.93ドル)儲かりますから、
保有期間全体では25.305ドルの儲けということになるわけです。
・12.375ドル+12.93ドル=25.305ドル
これに対してこの債券の買値は87.07ドルです、
上のように保有期間9年で25.305ドルの儲けですから、
複利計算によって年あたりの儲けを逆算すると、
年率2.994%という結果になります。
このようにして計算した年あたりの収益率(=2.994%)が、
上記でいうところの「利回り」です。
ちょっとややこしいですが、
大丈夫でしょうか、
この「利回り」というヤツは債券投資のキモです。
すべての債券は日々市場で値が変わりますが、
「利回り」という統一基準で比べれば、
いま買えばどの程度有利なのか不利なのかがわかるのです。
言い換えればこの「利回り」は、
債券の実力を計る共通の指標だといえるでしょう。
さてその前提で、さきほどの債券です。
・利率1.375%
・利回り2.994%
・販売価格87.07ドル
・償還日2031/11/15
冒頭のように9年後に満期が来る銘柄ですが、
保有期間を通した「利回り」は2.994%にもなります。
債券の価格は日々刻々変動していますが、
私たちが買った瞬間にこの「利回り」は確定するのです。
言い換えれば保有期間中に毎年支払われる利息の額と、
満期時点で支払われる本体価格(100ドル)が決定される
ということです。
しかも債券はすべて、
満期まで持てば(発行体が破綻しない限り)、
必ず額面100ドルで償還されます。
現在のように金利が高い時期に長期債を買いますと、
その期間中ずっと高金利を享受できますし、
逆に低金利時に長期債を買いますと、
満期まで延々と低い「利回り」に我慢しなくてはなりません。
この差は大きいです。
ご参考までに、つい2年半前のコロナ直前では、
アメリカの10年債利回りは0.7%ほどに過ぎませんでした、
あのころアメリカの長期債を買った人は、
さぞかし悔しい思いをしていることでしょう。
逆に現在のような高金利下では、
アメリカ国債は良い投資先になりえます。
ただしアメリカの国債を買う際に、
いくつかご注意いただきたいことがあります。
一つ目はアメリカの財政状態への懸念です、
日本にくらべればまだまだ健全ではありますが、
昨今アメリカの財政も徐々に悪化しつつあります。
万一のデフォルトがないとは言い切れません。
二つ目は為替の変動です、
あしもと円安が進んでおり、現在のドル円レートは
1ドル=139年代半ばですが、償還金や利息の支払いは
すべてドル建てです、受取時に円高に戻っていれば、
円ベースの収益率は下がります。
三つ目は証券会社の店頭でなかなか買えないという点です、
証券会社からみればアメリカ国債は手数料が稼げる商品では
ありません、彼らからみれば債券型投信を売っていたほうが、
よほど儲かるのです。店頭に米国債を買いに行って、
ほかの商品を買わされたというお話も聞にします。
四つ目はアメリカの金利の上昇です、
アメリカの金利がさらに上がるとどうでしょう、
そこから見れば3.2%ですら低金利になっているかもしれません、
「急いで買って失敗した」という懸念もあるのです。
このような点に対する注意は必要ですが、
アメリカの金利がここまで上がってきますと、
ペーパーアセットのなかでの分散先として、
検討の余地があると思います。
では今回はこのへんで。
(2022年9月1日)
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