■金融危機は突然に
みなさんこんにちは。
僕はいつも思います、
金融危機は突然やってくるものだと。
毎日ニュースでやっているので多くの方はご存じだと思いますが、
いま世界は金融不安に見舞われています。
やっぱり昨年FRBが実施した急速な利上げは、
市場にひずみをもたらしたのだと思います。
急速な利上げによって債券の価格が急落し、
多くの金融機関で含み損が拡大しました。
持っている債券の価格が下がっても、
売りさえしなけれ含み損状態で済みますし、
債券は満期まで保有すれば額面でおカネを受けとることができます。
問題が起きるとすれば、
預金者からの引き出しが集中する場合で、
銀行はおカネの引き出しにこたえるため、
手持ちの債券を売らなければなりません。
つまり損失の実現(=確定)です。
この損失が純資産額を超えますと債務超過で、
その先は経営破綻です。
今月に入りアメリカで3つほど銀行が破綻し、
その動揺がスイスの大手銀行クレディスイスに伝染しました、
以前から同行の経営不安が懸念されていましたが、
「鎖は一番弱いところで切れる」です。
ただ僕は今回の不安の連鎖は、リーマンショックのような
無限連鎖的な金融ショックにはつながらないと思います。
なぜなら今回のショックはリーマンショックと違って、
危機の発生源が明らかになっているからです。
この点で「不良資産を誰がどれほど持っているかすらわからない」
という怖さがあった、前回の危機とは性質が異なります。
銀行の財務諸表をつぶさに点検すれば、
どの銀行がどういった債券をどのくらい持っているか明らかですし、
たとえば「金利があと1%上昇すれば、どの銀行のバランスシートが
どの程度痛むか」といったシュミレーションも簡単にできます。
金融当局の対応も前回と違って随分と迅速です。
たとえばアメリカの財務省が(破綻銀行の)預金の全額保護をすぐさま発表したり、
スイス政府がUBSによるクレディスイスの買収に介入したりするなど、
前回の危機の教訓が生かされています。
もちろん今後いくつかの中小銀行が破綻すると思いますし、
大手でも財務内容の悪い銀行のなかには、破綻に追い込まれる
ところも出てくるでしょう。
それでも上のような理由で僕は、金融システムを揺るがす連鎖的破綻は
起きないと思います。
人間は未知のものに対しては過剰に反応しますが、
危機の正体が明らかになれば案外と冷静に対処できるものです。
ただし今回の混乱が収まったとしても、
そこから私たちが学ばなければならないことがあります。
注目しておきたいのは金の値動きです。
これもニュースで時々流れますのでご存じの方も多いと思いますが、
今月に入って金(Gold)の価格は随分と上がりしました。
3月の月初時点で1オンス=1820ドル近辺だったものが、
足元では1990ドルほどで、この間の値上がり率は9%ほどにもなります、
円建ての金価格が史上最高値を記録したと日本国内でも話題になりました。
金価格の上昇は明らかにシリコンバレーバンクの破綻やクレディスイスの破綻懸念を
受けたもので、預金が紙くずになる不安から預金者は安全な金へおカネを移したのでしょう。
今回の不安は徐々に収まってゆくと思いますが、
私たちは「のど元過ぎて熱さ忘れて」しまうわけにはゆきません。
そもそも今回の騒動は、
インフレの高進⇒中央銀行による急速な利上げ
⇒債券価格の急落⇒銀行のバランスシートへのダメージ
という流れの中で起きたことですが、
中央銀行による急速な利上げが金融システムのどの部分に圧迫を加え、
それがシステムの中でどのように連鎖してゆくか・・、
これからもその経路を予見することは困難です。
今回の騒動にしても、
リーマンショックにしても、
危機はある日突然に表面化し金融システムの内部で連鎖的に伝染してゆきます、
しかも昨今はSNSを通して瞬時に不安が広がりますから、
ますます危機の予見は難しいと考えておくべきだと思います。
ではいつ、どこで、どの程度の規模で危機が起きるかわからないこの世の中で、
私たちは自分たちの資産を何とか維持してゆくことができるのでしょうか。
僕はできると思います。
今月のはじめからの金価格を見れば、
おのずと私たちがとるべき備えは明らかだと思います。
リーマンショックもそうでしたが今回もまた同じことが起きました。
紙の資産(=ペーパーアセット)から隔離された資産、
つまり実物資産への分散が有効であることが今回もまた証明されたといえるでしょう。
まず何よりもこの世の中が不確実性に満ちているという前提に立つこと、
そしてその前提で平時から現物資産への分散、言い換えれば「資産の質的な分散」を
進めておくことに尽きると思います。
では今回はこのへんで。
(2023年3月24日)
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