■短期債を買うか、長期債を買うか
みなさんこんにちは。
今回はジミな米国債の話をいたします、
ジミな話が嫌いなひとは読み飛ばしてください。
まず基本的なところからです。
米国債には大きく分けて二つあります、
半年ごとに利息がもらえる「利付債」と、
利息がない代わりにその分、割引価格で発行される「ゼロクーポン債」です、
ゼロクーポン債は「ストリップス債」とも呼ばれるのでご注意ください。
一定額の蓄えがあり、
「利子なんていらない」という人はゼロクーポン債を、
年金生活にに入り生活費の足しにしたい方などは利付債をお選びください。
もう一つの切り口として、
「その債券がいつ満期になるか」という点も大切です。
一般に債券は満期までの期間が長ければ長いほど利回りが高いのですが、
今のように中央銀行が政策的に金利を上げている時期は、
逆に長期債の利回りが、短期債のそれを下回ることがあります。
このあたりから債券の投資判断は高度になってゆきます。
先ほど「中央銀行が政策金利を決めている」と言いましたが、
足元のようにインフレ傾向が強い時は、インフレ潰しのために短期金利(政策金利)は
上げられます。
このため満期まで2年や3年というように短期のうちの償還される債券は、
政策金利の上昇に引っ張られる形で上がります、
いわば人為的にあげられた政策金利の影響を受けやすいということです。
一方で10年債や20年債などの長期債は違います、
なぜなら中央銀行(注)は長期金利をいじらないからです。
注)ここでいう中央銀行はアメリカの中央銀行(相当)のFRBをさします、
これに対し日銀の政策は異質で長期債の金利もいじります(YCC)
そのため、長期債の利回りは(短期債と違って)自然な経済活動のなかで決まります。
現在アメリカの10年債利回りは3.8%程度ですが、
3年債利回りは4.2%ほどもあります。
この長短逆転現象は、3年債のほうが5.25%の政策金利に引っ張られ、
いわば「人為的に高くなった結果」起きている現象といえるでしょう。
さてここで私たちが米国債を買うに際し、
一つの選択をしなければなりません。
それは「短期債を買うか、長期債を買うか」です。
一つの選択肢は3年債を買い、
人為的に作られた高金利4.2%を向こう3年享受するという選択です。
もう一つの選択肢は10年債を買い、
現在のアメリカ経済の強さに向こう10年間乗っかり続けるという選択です。
皆さんはどっちをお選びになるでしょう。
僕なら10年債を選びます。
理由は以下の2つです。
まずは為替の観点からです、
足元で再び円安が進んでおり現在は1ドル=140円近辺です。
3年債を買うとして、果たして満期を迎える3年後、
1ドル=140円より円安が進んでいるか、
それとも円が持ち直し、1ドル=120円まで戻っているのか・・・
この点はある意味3年間に受けとるリソク以上に重要かもしれません、
なぜなら1ドル=120円なら▲14%、
3年間の利息がチャラになるからです。
為替の変動は、それが短期であればあるほど予測困難で、
ギャンブル的要素が強くなると僕は思います。
債券投資という最も安全な投資から、
ギャンブル的要素は極力排除すべきではないかと思います。
もう一つ僕が10年債を選ぶ理由はアメリカの物価動向です。
アメリカのインフレ率は昨年央すでにピークに達し、
その後徐々に下がっています。
昨年以降行った10連続利上げの効果が遅れて出てきますから、
アメリカ経済は徐々に過熱感が収まってくるでしょう。
さきほど長期金利は自然な経済の活動によって決まるといいましたが、
経済がスローダウンすれば長期金利は下がります。
数字で申し上げるのは難しいですが、ここ10年ほどのアメリカ10年債の
利回りをふり返りますと、その平均値は大雑把にいって2%ほどです。
仮にこの2%に向かって10年債利回りが下がるなら、
足元の10年債利回り3.8%はかなりの高金利です。
以上整理すると
・短期の為替変動というギャンブル性を排除できる点
・現在の高金利を向こう10年にわたって享受できる点
以上2点から、
僕なら10年債を買います。
では今回はこのへんで。
(2023年5月26日)
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