■来年の金相場を考える
みなさんこんにちは。
一般的に金利が上がると金(Gold)は売られます。
なぜなら金を持っていても、通常一円もおカネをもらえないけど、
債券や預貯金を持っていれば利子がもらえるからです。
たとえば皆さんが手持ちの10,000ドルでアメリカ国債(10年債)を買ったとしましょうか、
この場合、皆さんは向こう10年にわたって毎年420ドル(注)の利息を受け取れますし、
10年目には元本の10,000ドルを受け取ることもできます。
注)現在の10年債利回り4.2%として計算しました
毎年420ドルが10年ですから、保有期間中の利息の合計は4,200ドルにも
なる計算です。
10年で4,200ドルなら魅力的な投資ではないでしょうか。
なので、本来なら今のような高金利下では、
多くの人は金より債券を選ぶはずです。
つまり金ウリです。
にもかかわらず、足元の相場をみますと、
金は逆に随分と値上がりしています。
ここのところ史上最高値を更新したこともあり、
金価格の上昇はよく話題に上りますが、
これは今に始まったことではありません。
たとえば足元のアメリカの長期金利(10年債利回り)をみますと、
2020年の年初0.7%程度から2023年10月に記録した5%超まで、
2年10か月にわたり急上昇しました。
一方でこの間の金価格はどう動いたでしょう、
以下この間の値動きです。
・2020年の年初→1オンス=1600ドル前後
・2023年の10月→1オンス=1950ドル前後
これをみれば、この2年10か月というもの、
アメリカの金利急騰にも関わらず金の価格は上昇してきたことがわかります。
もっと長期で見ても、
金ガイは続いています。
たとえば僕がこの商売を始めた2004年ごろ、
金の価格は1オンス=400ドルほどにすぎませんでした。
当時1オンスのメイプルリーフ金貨が、
4万円台で買えたものです。
それが今では1オンス=2000ドルほどですし、
メイプルリーフ金貨の価格も34万円近くもします。
しかもこの20年間のアメリカの長期金利をみると、
下は0.5%ほどから上は5%ほどの間で上げ下げしてるだけで、
まあ大雑把に言ってしまえばボックス圏です。
もちろんこの間も、金利の上下動によって金の価格は影響を受けたはずですが、
それは短期的なお話で、このように長い時間軸でみると、
金の価格は上がり続けていることがわかります。
こんな不思議な現象をみると、
その原因について考えざるをえません。
経済は教科書通りにはいきませんし、
その時々の社会情勢や投機、あと人間の心理で動く場合もあり、
一筋縄ではいきません。
なので「こうだ!」と決めつけることはできませんが、
僕には以下の原因があるようにみえます。
まず一つ目は、
中央銀行によるお札の刷りすぎです。
この点に関してはたびたびこのメルマガで触れてきましたので、
ここでは割愛させていただきますが、FRBの資産が2008年比で
10倍近くになるなんて、よく考えると尋常ではありません。
多くの人はお札の希薄化を心配していると思いますし、
なにより今後も危機のたび、お札の増刷が繰り返されるのではないかと、
懸念を持っているのではないでしょうか。
言い方を変えると、金の価格が上がっているのではなく、
お札の価値が下がっているともいえるでしょう。
二つ目は、
ドル基軸体制の揺らぎだと僕は思います。
アメリカはすでに世界の覇権国家ではなくなりました。
経済力の点ですでに中国に迫られていますし、
その先にはインドやグローバルサウスと呼ばれる国々が、
すこしずつ近づいてきています。
経済的な面だけではなく、総合的な国力の点でも同様で、
昨今ではプーチンの戦争や中東での紛争、さらには台湾問題など、
「パックス・アメリカーナ=アメリカの覇権の下での世界平和」は
過去のものになりつつあります。
強いアメリカの経済力と軍事力、
言い換えれば圧倒的なアメリカの国力に裏打ちされたドル基軸体制が、
いずれ揺らぐと考える人が増えてくるのは止めようがないと僕は思います。
ドルの保有に万全の安心感が持てないなか、
いま「究極の資産=金」への逃避が起きているのではないでしょうか。
以上2点挙げたように、
今起きている金高(きんだか)は、
基軸通貨ドルに対する信認の低下に加え、
通貨そのものに対する信認の低下という、
複合要因で起きているのだと僕は思います。
もしこの考えが正しければ、
金の相場は今後どう動くでしょうか。
前半でみたように、金の価格は2年10か月にわたり、
金利の上昇という逆風にもめげずあがってきました。
そして今起きつつあるのは、アメリカの金利下落です、
10年債利回りをみると、すでにここ2か月という短い間ですら、
5%から4.2%まで下げてきました。
おそらく来年のアメリカ経済はスローダウンするでしょうし、
もしかしたらごく短い景気後退に入るかもしれません。
これはどういうことかといいますと、
来年のアメリカの金利はさらに下がるということです。
さきほど僕は「金の価格は2年10か月にわたり、
金利の上昇という逆風にもめげずあげてきました。」
と申しあげましたが、来年は、これに加えて金利の低下という、
金にとっての追い風が吹くということです。
さらに
「基軸通貨ドルに対する信認の低下に加え、
通貨そのものに対する信認低下という複合要因」
という根の深い問題が解消する見通しはありません。
このような点から考えて、来年は短期的要因と長期的要因が重なって、
金が買われやすい環境が続くと僕は思います。
そしてこれは金だけではありません、
ほかの実物資産全般も同様の動きをすると僕は思います。
では今回はこのへんで。
(2023年12月7日)
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