■半導体サイクル、大注目の四半期決算
みなさんこんにちは。
先週僕はこのメルマガで、
2022年前半の新聞切り抜きをみていて感じたことを少し書きました。
2022年の前半といえば、前回の半導体サイクルがピークを迎えた頃でした、
以下、前回サイクルの「ピークとボトム」をご参照ください。
・ピーク⇒2022年3月ごろ
・底⇒2023年3月ごろ
つまり2022年前半の新聞記事は、
すでに半導体サイクルが下降線をたどりつつあった時期のものです。
以上を前置きしたうえで、
当時の日本経済新聞の記事を3つだけ紹介させていただきます。
・2022年4月12日(半導体サイクルがピークから少し下げ始めた頃)
タイトル:『半導体関連株、見えぬ底』
『米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)はコロナショックを経て
2年あまりで3倍になったが、2022年に入り減速トレンドへの転換が鮮明だ。
需要減や在庫のだぶつきを警戒した投資家の売りが出ており、
半導体関連銘柄への見方は厳しい。』
さらにこの記事では『在庫増懸念、好決算でもウリ』と題し、
直近発表された好決算にもかかわらず、株が売られた事例として
マイクロン・テクノロジーやAMATなど、アメリカ半導体企業の決算
にも触れています。
僕から補足しますと、この時点の半導体株の下落はホンの予告編で、
この年の年末に向け下げ続けることになります。
ではもう少し後の記事も見ておきましょう。
・2022年5月13日(うえの記事からひと月後)
タイトル:『東京エレク 今期も最高益。部材調達巧み、海外勢に差』
記事の内容は2023年3月期の同社業績発表を題材にしたもので、
同社やディスコ、スクリーンなど、日本の半導体製造装置メーカーの
好業績をつたえる一方で、ラム・リサーチやKLAやAMSLなど
海外の同業者の業績急降下も紹介しています。
さらに株価にも触れており、
以下のように補足しています。
『東エレクの株価は米国金利や景気不安などから調整し、
昨年末に比べ19%安の水準。他の日本勢も3〜4割安と下げが大きい。
株式市場では22年度の業績はある程度、株価に織り込まれている
という見方もある』
ご参考までに、
この時点で同社が発表した2023年3月期の業績見通しは
・売上高(2兆3500億円)、営業利益(7160億円)
でしたが、この期の実際の業績は
・売上高(2兆2090億円)、営業利益(6177億円)
に終わっています。
最後にもう一つみておきましょう、
上の記事からさらに2か月ほどたったころの記事です。
・2022年7月5日
タイトル:『逼迫一転 凍る半導体株』
『(コロナ・ショックによる需要逼迫で)足りないはずの半導体に突然、
供給過剰懸念が浮上し、投資家は凍り付いた。在庫循環から
数年に一度繰り返される半導体急変の悪夢だ。株式市場は企業業績の
悪化を織り込む「逆業績相場」へと局面が変わってきた』
冒頭2つの記事でも、すでに半導体株の先行きに対して悲観的な
見方を伝えていましたが、この時期になると「お先真っ暗感」
がではじめているのがよくわかります。
このあと半導体株はまだまだ下げ続け、
反転するのはこの年の末(2022年12月)になってからです。
以上今回は、
前回の半導体サイクル下降と、そと過程における新聞記事、
さらにその間の株価の動きなどを紹介しましたが、
私たちはこの記事から多くのことを知ることができます。
まず一つ目は、
「株価は半導体サイクルを先どって動く」ということで、
前回のサイクルで株価は4か月ほど先回りして動いたことがわかります。
したがって私たちが半導体サイクルを利用して儲けようとする場合、
少なくとも4か月後の需給を予想しなければなりません。
言い換えれば半導体が売れなくなってから動いても、
手遅れだということです。
二つ目は、
会社の予想やアナリストの分析には慣性が働きやすいという点です。
上の東京エレクトロンによる業績予想もそうですが、会社発表には、
「足元が好調なら、将来も好調に推移するだろう」という思い込みが
働いているように思います。
「逆もまた真なり」ではありますが、
このように会社やアナリストによる業績予想には、
思い込みによる「慣性の法則」が働くことを忘れるべきではありません。
言い換えれば会社が発表する業績予想など鵜呑みにせず、
独自の予想をたてるべきだということです。
上の例でいうならば、
半導体サイクルを加味した補正が必要だったわけです。
そして最後に、
私たちが上の記事から知るべき最も有益な情報は、
「相場の転換点を知る方法がある」という点です。
半導体株の場合この転換点は重要で、
たとえば前回サイクルのピーク(2021年12月)から、
ボトム(2022年10月)にかけSOX指数は40%も下がりました、
個別の株をみるとエヌビディアのように60%以上も下げた
銘柄もあります。
もし相場の転換点を知ることができれば、
被害を最小限にとどめることができたはずです。
さてその「相場の転換点を知る方法」です。
最初の記事にも書かれていますが、
好決算を発表した会社の株が売られたり、
逆に悪い決算で株価が上がったりすることが、
実際にはよくあります。
記事ではマイクロンやAMATの事例を紹介していますが、
このような現象は結構よく起きるのです。
なぜでしょう。
それは決算発表前にすでに好調な業績が織り込まれてしまい、
実際に良い数字をみたら、市場はその先を予想し始めるからです。
人は誰でもソンはしたくありません、
他人より一歩先を予想して動くことにより、
損失は回避できますし利益を増やすことも可能です。
そうやって先んじて動く心理が集まって、
相場にリズムが生まれるのでしょう。
問題はここからです。
上記3つの観点で今の半導体株をみるとどうでしょう。
先週レゾナックという会社が2024年12月期の業績見通しを
発表しましたが、それによると最終利益が、従来予想の100億円から
250億円に増えるとのことでした。
最終利益が100億円から250億円に増えると、
EPSは2.5倍になりPERは0.4倍になりますから、
これはかなりの好材料といっていいでしょう。
一方で株価はといいますと、
素直にこの好材料に反応し、
当日の同社株は10%以上も上がりました。
一方で翌日に、
台湾の半導体大手のTSMCが四半期決算を発表しました。
業績は好調で事前予想を上回りましたが、
株価は売られました。
今年の半導体出荷の見通しを、わずか下げたからだと
説明されているようですが、僕には「知ったらおしまい現象」のように
みえます。
これらはホンの走りで、
いよいよこれから先期(2024年3月期の年間決算)の業績発表が始まります。
はたして、
レゾナック型が主流になるのか、
それともTSMC型が主流なのか・・・。
半導体株は2023年の年初から1年4か月駆け上がってきて、
足もとSOX指数は高値圏にあります。
一方で今回の半導体サイクルは2023年3月がボトムですから、
すでに拡大期は1年と1月に及びます。
もしこのあたりで「TSMC現象」、
いいかえれば「好決済に対し株価が下げて反応する」が
主流になればどうでしょう。
これは「炭鉱のカナリア」で、
半導体株の下落の兆候だと僕は思います。
逆に多くの株が好決算に素直に反応して上がるようならば、
半導体株のピークは先に来る可能性が高いと思います。
僕自身はといいますと少しずつ警戒モードに入っていますが、
今回の決算発表が「TSMC型」になるとは思いません。
でも次回の決算発表(7月末から8月初旬にかけ発表される4-6月期決算)
あたりは要警戒だと思います。
では今回はこのへんで。
(2024年4月19日)
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