■すでに始まっている財政悪化のコスト負担
みなさんこんにちは。
「日本の財政悪化は深刻だ」
特に2000年以降はこんな懸念を持つ人が増えてきたように思います。
なかには日本の財政破綻を煽り、
特定の金融商品への誘導を行う人たちもいます。
あながち否定できないのがこの「煽り」の怖さで、
過剰に反応する富裕層もいるようです。
なかには資産の大半を海外へ逃がしたり、
法外な値段でコインなどの現物資産を買ってしまう人もいます。
僕自身はといいますと、
確かに日本の財政破綻は無視できないシナリオですが、
それよりもっと心配すべきは、ジワジワと私たち国民が、
「破綻回避のコスト」を支払わされるシナリオだと思います。
たとえばこんなイメージです。
日本政府が発行する国債等の50%近くを日銀が持っていますが、
これは2013年以降、安倍さんが打ち出した「三本の矢」の一つ、
「低金利+流動性供給」政策が起点になっています。
それ以降、日銀は10年以上も市場で国債を買い続けた結果、
政府が発行する国債等の半分近くを日銀が持つという、
いびつな構造になってしまいました。
あれから11年。
外的要因が大きかったと思いますが、
幸い日本の30年デフレは終息し、足元でインフレ率は2%台まで
高まりました。
本来ならこの辺で
・金利の正常化(=利上げ)
・流動性供給(QE)の停止⇒流動性回収(QT)の開始
と行きたいとろです、
なぜなら今足元で起きている円安原因の一つは、
日本の低金利にあるからです。
1ドル=160円・・・
この水準が、
私たち日本人にに与える影響は大きいと思います。
輸入品、たとえば小麦粉、飼料、エネルギーの価格など上昇し、
そこから連鎖し、私たちが日々消費する食品やガソリン、
電気・ガスなど幅広いモノとサービスの価格が上がっています。
それだけではありません、
海外勢に買い負けて、そもそも日本に入ってきにくくなった
食材などもあるようです。
お薬の分野でも同様で、
海外の製薬会社は円安の日本では儲からないと考えているようで、
日本での治験を申請しない例もあるようです。
こんな調子で円安が続くと、物価だけでなく様々な分野で、
私たち日本人の生活に悪影響がでると思います。
ではなぜここまで急に円安が起きてしまったのでしょうか。
仮に上記のように、低金利が円安の主因ならば、
利上げを行い、流動性供給をやめてしまえばいいはずですが、
そんな簡単なお話ではありません。
利上げを行うといっても、例えばアメリカのように
2年で5%も政策金利を上げられるかといえば、
そこはどう考えてもムリです。
日本経済の基礎体力はアメリカに比べ格段に弱く、
利上げといってもせいぜい0.25%×2回ぐらいが限界でしょう。
流動性供給(QE)を早々に停止し、逆に流動性回収(QT)を
始めるべきなのはわかっていますが、それはもっと困難です。
たとえばQE停止は、
日銀が市場に流通する日本国債を買わなくなるということです、
いままで日銀は、いわば人為的に高く設定した価格で国債を買ってきましたが、
それが無くなるといったい何が起きるのでしょう。
日銀に代わって誰かが国債を買わなければなりませんが、
その際の買い値は市場の原理で決まることになります。
いままでは日銀が高値で政策的に高値で買ってきましたが、
その梯子が外れると、当然ながら相場は下がる(金利は上がる)
ことになります。
では金利が上がるといったい何が起きるのでしょう。
ご存じのように日本政府は大量の国債を発行していますから、
この金利の上昇は大問題です、なぜなら政府の利払いが増えるからです。
日銀(と政府)が気にしているのはこの点で、
なかなかQE停止⇒QT開始とならない理由の一つはこの点にあります。
まとめると、
現在の円安は以下のような構図があるといっていいでしょう。
・政府の財政悪化の度合いが大きくなってきた
・政府の利払い拡大への懸念も大きくなってきた
・なのでQE停止⇒QT開始はやりにくい
・日本の政策金利は上げにくい、長期金利も上がりにくい
・日米金利差から円安が進む
上のように円安要因を掘り下げてゆくと、
いま進行しつつある円安の原点には、
日本の財政悪化問題があることがわかります。
その結果、私たち日本人は
・インフレと円安による支出増
・ドルベースでみた資産の減少
・相対的な貧困化進行
という負担を強いられているといっていいでしょう。
逆にインフレの進行によって政府の(実質的な)財政負担は
減りますから、いまの円安は「インフレ税」と言えなくもありません。
このように順を追って考えてゆくと、
「すでに私たちは財政破綻を回避するためのコストを負担している」
と見ておくべきではないでしょうか。
冒頭のように財政破綻を煽る人は世に中にたくさんいますが、
それより私たちが懸念すべき現実的な問題は、上記のような
「財政破綻の回避コスト負担」のほうだと僕は思います。
(2024年7月4日)
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