半導体株の予想修正

ここに至る経緯の整理

今回の本欄は半導体株の動向予想に重点を置かせていただきます。

まずは直近の半導体の出荷額から見ておきましょう、下のグラフはSIA(Semiconductor Industry Association)が発表した直近の世界出荷額です。青線は出荷額そのもので、赤線は対前年同月比です。半導体にはサイクルがありますので、このグラフはとても大切です。

(世界半導体出荷額推移、SIAのサイトより転載)

ここであらためて直近の半導体サイクルを整理しておきます。

ピーク@:2017年11月(赤矢印)

(この間18か月)

ボトム@:2019年4月(青矢印)

(この間31か月)

ピークA:2021年10月(黄矢印)

(この間18か月)

ボトムA:2023年3月(緑矢印)

ご覧のように上記の期間では、ピークとボトムの間は18-31か月です、それ以前を遡ってもほぼ同様の傾向が見えますので、おそらくこれは「たまたま」ではなく、なんらかの市場原理に基づいた傾向ではないかと僕は思います。なお18か月と31か月の平均はとりづらいのですが、従来通りここでは24か月を採用します。

上記のようなサイクル論に基づき、昨年来僕は以下のように書いてきました。

次回のピーク(かりにこれを「ピークB」とします)は「ボトムA」から24か月後の2025年の年初あたり、株価がサイクルを4か月先取って動くなら、半導体株のピークは2024年の秋口あたりです。

上のような予想に立って、僕は皆さんに対し今年4月末に半導体株の売却と、銀行、商社、不動産へのスイッチをお願いしました。

今回は皆さんに、僕が考える今後の見通しをお伝えしたいと思います。

次の半導体ピークとAI

今回の予想の焦点は以下2つです。

@ 次のピークとボトムはいつか
A AIは本物か

まず@ですが、しつこいようですが今までのサイクルを以下に再掲させていただきます。

ピーク@:2017年11月(赤矢印)

(この間18か月)

ボトム@:2019年4月(青矢印)

(この間31か月)

ピークA:2021年10月(黄矢印)

(この間18か月)

ボトムA:2023年3月(緑矢印)

次のピークが「ボトムA」から24か月後に来るとすれば、2025年3月(これを「ピークB」とします)です、さらにそこから24か月後にボトムが来るならば2027年3月(これを「ボトムB」)あたりです。

この2回を上に加えると以下のようになります。

ピークB:2025年3月

(この間24か月)

ボトムB:2027年3月

わかりやすくするため、現在以降のグラフを追記すると以下のようになります。繰り返しですが、赤線は前年同月比で青線は出荷額そのものです。手書きですみませんが、点線部分は修正前の予想、実線部分が修正後の予想です。

(世界半導体出荷額推移グラフに弊社加筆加工)

まずは従前の予想、すなわち点線グラフからです。

先ほどお話ししたように、この線は従来のサイクル見通しを前提に次のサイクルを予想したものです、市場は2025年の年初(このグラフでは2月にしています)に「ピークB=オレンジ矢印」を付け、その後は急降下します、サイクルがボトムを付けるのは2027年2月の「ボトムB=灰色矢印」です。

なんどか申し上げたように、僕は皆さんに半導体株の売りをお願いした、今年4月時点ではAIが市場として成立するか懐疑的でした。単なる「新しいもの好き」による一時的な盛り上がりの可能性を心配していたのです、あれから半年、僕なりに市場を見てきましたが、今起きているのはブームではなく、実態を伴った需要拡大だと判断しました。

この判断修正は半導体サイクルに影響を与えますし、株価への影響を大きいです。

今回の見通し変更はその点を加味したものとお考え下さい、AIの立ち上がりを加味したサイクルは、上のグラフの実線で書きました。「ピークB」に対しては時期・値ともさほど影響はないと見ていますが、問題は「ピークB」の後で、以下のように見方を修正しました。

修正後の実線グラフ

  • 従前からある汎用半導体は「ピークB=オレンジ矢印」のあと徐々に出荷額はおちる
  • 一方でAI半導体は出荷が伸び、半導体トータルでは赤実線のように対前年比でマイナス入りは回避できる
  • 結果的に出荷額を見ると青実線のように減少せず、「ボトムB=灰色矢印」時点でも横ばい程度にとどまる
  • 「ボトムB=灰色矢印」のあとは、通常の半導体サイクルの上昇に加え、さらにAI半導体が伸び、近年にない大きな上昇期に入る

以上のように予想を修正いたしました。

ご参考までにですが、下のグラフはWSTS(世界半導体市場統計)が作成した、直近の市場予想です。赤線の左側は実績で、右側は今後の予想です。出荷額ですから、上のグラフの青線に相当いたします、出所はいずれもWSTSですが、下のグラフは12か月の移動平均ですらから、上の単月グラフに比べなだらかになっています。

(世界半導体出荷額推移12か月移動平均、世界半導体市場統計/WSTSのサイトより転載)

このグラフを見ると、2025年の末に至るまで市場は拡大を続けることになっており、上の僕の予想に一致しています。

その場合半導体株はどう動くか

さて問題はここからです。上記のように僕はAI需要が拡大し、次回のボトム「ボトムB=灰色矢印」は不明瞭になるとみています、結果的に半導体出荷額は減らないでしょう。

ここで注意が必要なのは、一口に半導体といってもAIサーバーやエッジAIに使われる先端半導体もあえれば、従来型の汎用メモリーなどもあるという点です。次のボトムは不明瞭になるといっても、おそらくその恩恵を受けるのは、AI分野に強い一部のメーカーに限定されると僕は思います。今後の半導体株投資には、このような視点が求められるでしょう。

 

(2024年10月31日)




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