■ディープシークが半導体市場に与える影響
みなさんこんにちは。
前回のメルマガで僕はこんなお話をしました。
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どんな相場だっていつかピークを迎えます。
そしてそのあと待っているのは株価の急落です。
確かにAIは並外れた大波ではありますが、
いずれAIも社会全体にいきわたり、
それが当たり前になるときがやってくるでしょう。
市場は先を見ますので、
いずれ株価はそれを織り込みます。
そして織り込みが終わったところが関連株のピークです。
AI相場はまだ初期段階で、
僕の感じだとせいぜい富士山の三合目あたりです。
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図らずもあの直後、
市場は「ディープシーク・ショック」に見舞われました。
皆さんよくご存じだと思いますが、
中国のディープシークというベンチャー企業が、
新しいAIのモデルを発表したのが発端でした。
しかも驚くような低コストかつ短期のうちに・・、
市場がビックリしたのはコストだけではなく、
その性能でした。
最先端の性能とはいきませんが、
まあソコソコの機能でしかもオープンソース(注)です。
注)オープンソースは中身を公開し、
誰でもタダで使えるモデルをさします。
『こんな安く短期間で開発できるなら、
今まで考えられてきたような巨額な投資は必要ないんじゃないか。』
こんな見方が台頭したのは当然です。
たとえばエヌビディアの高性能GPUやTSMCの先端半導体、
SKエレクトロニクスの広帯域メモリ(HBM)など本当に
必要なんだろうか。
あるいはまた、
そんなすごい性能の半導体がいらないとしたら、
大規模なデータセンターもいらないだろうし、
それがいらないのならごっつい高速光回線もいらないし、
電力使用量もそんな増えないんやないか・・・
つまり、
いままで高性能AIモデルを前提として成り立っていた、
AIピラミッドが一気に崩れた・・・
これが先週のディープシーク・ショックの構図だったと思います。
さて問題はここからです。
あれから1週間がたち、
ディープシークの新モデル(R1)の分析が進みつつあります。
同社は開発コスト8億円と発表しているが、
その8億円はいったいどこまで含めているのか、
たとえば利用したといわれるエヌビディアの旧製品(H800)の購入費は
含まれているのか、あるいは使用するデータセンターの設備費は、
その8億円にはいっているのか。
エヌビディアの旧製品ではなく、抜け道を使って
同社の現行品(H100)をこっそり輸入しているんじゃないのか。
もしエヌビディアの旧製品を使っているとしたら、
近々出荷が始まるエヌビディアの新製品(B200)との
性能差をどうやって埋めてゆくのか。
適正なプロセスで他社のリソースを使ったのか、
先行他社が作った非公開モデルを無断で流用したんじゃないか。
RIの利用者情報は中国国内のサーバーに移送されるが、
中国当局に利用される可能性についてどう考えるのか。
などなど、ディープシークの課題が明らかになってきました。
これらについては、これからの精査を待ちたいと思いますが、
仮にディープシークの「低コストAI」に問題があったとしても、
僕はこの「AI低コスト化」の流れは止まらないと思います。
過去の歴史を振り返ると、いったん始まった低価格化の流れが
止まることはありません。
そもそも低コスト化は、水が高いところから低いところに
流れるのと同じ現象です。
1960年代にIBMが作ったコンピューターは時代の経過とともに
一般家庭に普及しましたし、その行きついた先がスマホです。
一方で低価格化と量産化が進むと同時に2021年に稼働した「富岳」、
そしてその流れをくむスーパーコンピューター「京」というように、
高性能化、高額化の流れも併存しました。
技術の進展というのはそんな面があり、
AIもあとをたどると思います。
つまりより高性能・高額な先端AIの市場拡大と、
一般大衆にむけ量産される低価格AI(つまり端末側に収納される
エッジAI)の併存です。
もしこの見方が正しければどうでしょう。
その行き着く先は下の二つだと思います。
一つ目はより高性能化する最先端AI半導体の市場
と
二つ目はどんどん拡大する先端以外の半導体市場
です。
その結果、現在の半導体ピラミッドはやや形状を変えながらも、
質・量ともに大きくなっていくと思います。
この現象は短期ですすむのではなく、
一年、二年、場合によっては延々と続くでしょう。
僕はこのような長期的なイメージを持ちつつ、
目先の銘柄選択をしていきます。
では今回はこのへんで。
(2025年2月7日)
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