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アセットトライ
私は先日三井物産が新規に設定した「アセット・トライ・プラス」という商品の説明会に参加してまいりました。

基本的には、他のメディアで頻繁に取り上げられている商品について、私の著書・ウエッブサイト・Blog・メルマガなどでご紹介するつもりはありません、なぜならいつも言いますが、金融商品の場合、とくにメディアに頻繁に登場する商品は「売り手にとって」儲かる商品の場合が多いからです、「売り手にとって」儲かる商品というのはどのような商品かお解りですよね。あるいは私がわざわざ取り上げなくても、そのような商品はメディアに自動的に取り上げられる仕組みになっているからでもあります。
また、私がFP(というか投資コンサルタント)として中立の立場で見て、皆さまにお勧めするに値しないと考えた商品については一切取り上げるつもりはありません。

そのような前提で「アセット・トライ・プラス」です。
この商品の運用は「マン・インベストメンツ・リミテッド」というロンドンに本社を置くヘッジファンド運用の老舗が行っています。
説明会の冒頭で三井物産側から「個人向けヘッジファンド」という紹介がありましたが、正確にいうとこの商品は日本の「商品ファンド」に該当します。

「商品ファンド」というのは日本独自の「商品ファンド法」という法律に基づいて組成される商品で、厳密には欧米でいう「ヘッジファンド」ではありません。ただ、日本の「商品ファンド」と欧米の「ヘッジファンド」には似通った性格があり、大雑把に言ってしまえばこの商品は「ヘッジファンド」だといって差し支えないかもしれません。

さて、この商品の運用手法です。
まず本ファンドはマン社が運用する主力ファンド「AHL」を中心に組み入れた運用を行っています。

「AHL」は

●金融先物(31%)
●通貨、金利先物(37%)
●商品先物(31%)

に配分し

●運用手法は「トレンドフォロー型」
●目標収益率は年率で18%
●想定ボラティリティ(標準偏差=ブレ)は年率18%

となっています。もちろん同ファンドはAHLそのものではありませんが、AHLを主体に組み込んでいますので、値動き・ボラティリティなどはAHLライクになることが想定されます。ちなみにAHLの過去のトラックレコードをみると、1991年以来一度もマイナスをだしていません。

もう一つこのファンドには大きな特徴があります。
それは「優先劣後特約」です、この概念はちょっと複雑ですが簡単にご説明すると。

●まず、ファンドの資産を「優先出資部分」と「劣後出資部分」に区分する。
●満期償還時(2年後)に償還金を受け取る権利に優先順位を設ける。
●一般投資家は「優先出資者」、三井物産は「劣後出資者」となる。
●2年後の償還時においてファンド全体の損失が20%までにとどまる場合、優先出資者である一般投資家の元本は全額償還される。


以上のような仕組みが「優先劣後特約」です。今まで投資家に安心感を与え買い易くする仕組みとしては「元本確保型」が中心でした。

「元本確保型」は資産の一定部分を割引債券(ゼロクーポン債)などを組み込むことにより、償還時に元本を確保するスキームです。
この「優先劣後特約」は元本が確保されるわけではなく、例えば本ファンドでは総資産の損失割合が20%を超えると、一般投資家の出資部分についても元本が欠けてしまいます。
また、規約上は2年後にファンドの収益が6%を超えた場合、劣後出資者の取り分が大きくなるなど、劣後出資者(三井物産)から見ればリスクを多く取る分、リターンも優先出資者より多く受ける仕組みになっています。

以上まとめますと、本ファンドの2大特徴は

●ヘッジファンド大手のマン社による運用
●「優先劣後特約」の採用

といえるでしょう。

ただ、日本の「商品ファンド」全体の歴史を振り返れば、初めて商品化された当初に比べ、残念ながら先細り状態です。
現に本ファンドの兄弟ファンド(といっていいでしょう)に「セット・トライ」(プラスがつきません)という商品がありますが、こちらは投入してすでに5年が経過していますが、資産残高は20億円に過ぎません。
20億円というと伝統的な投資信託に比べれば「極小サイズ」ですね。ちなみに日本最大の投信「グロソブ」は4兆円に到達しました。
本ファンドを見ると、運用面。商品設計面、営業面などいずれをとっても、痛々しいほどの努力の結果がうかがえますね。

投資家にとっても

●伝統的な資産と異なった値動きをする
●損失20%までは元本が確保される


など、魅力的な商品に仕上がっているのではないでしょうか。

ただし

●単位型(2年間は一切売却できない)
●最低投資額が500万円とやや高い


など、多少使い勝手のい悪い部分もあります。
資産残高が5000万円以上お持ちの方には一考の価値はある商品だと思いました。

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