ホーム > 連続読みもの(抜粋版) > 2−2.マネージド・フューチャーズの使い方(その7)
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■マネージド・フューチャーズの使い方(その7)

上記はマネージド・フューチャーズについて考える場合、非常に重要なMargin to Equity(証拠金比率)の概念を示したものです、
一般的にマネージド・フューチャーズは投資家から集めた資金を全額投資に回すことはなく、通常使用するのは
その20%程度のみで、これを先物市場に証拠金として差し入れます。
為替の証拠金取引をおやりの方は理解しやすいと思うのですが、この証拠金に対して実際には数十倍、
時には100倍以上のレバレッジをかけて先物の売買を行うことになるわけです。このように高いレバレッジをかける一方で、
それ以外の部分は短期債等の流動性が高く、かつ安全性の高い資産で運用することにより、
ファンド全体としての安全性を高めた設計になっているといえるでしょう。

このようにメリハリの効いた仕組みをとることによって、高いリターンと流動性の共存が可能になるわけです。
2008年のリーマン・ショック以降、特にファンド・オブ・ヘッジファンドや不動産系のファンドは、
その流動性の低さから投資家からの解約請求に応じることができず、一時的に解約制限を行うものが続出しました、
が一方でマネージド・フューチャーズに関しては、解約制限を行ったという事例を私は目にしたことがありません。
これはもちろんこの時期のマネージド・フューチャーズの運用成績がよく、解約請求があまり出なかったということもあるでしょう。
しかしそれだけではなく豊富な流動性を確保し、投資家の解約請求に容易に応じることができるという、
マネージド・フューチャーズの特性も、一役買っているといえるのではないでしょうか。

もちろん過去は過去であって、これからどのようなショックが待ち受けているのか予想はできません、
場合によってはマネージド・フューチャーズにも予期せぬ未来が待ち受けているのかもしれません、それでも私たちは、
マネージド・フューチャーズが1990年登場以来あげてきた運用実績や安全性について、
客観的な眼で評価する必要があるのではないでしょうか。

もう一点忘れてはならないことがあります、それはマネージド・フューチャーズが景気サイクルの影響をほとんど受けない
という点です、株やコモディティは時として短期的に非常に大きなリターンをあげることができますが、
一方で本章の冒頭でご説明したように、景気サイクルから逃れることは決してできません。
逆にいえば株やコモディティなど景気サイクルに引っ張られやすい金融商品を持っている限り、
皆さんの資産は景気の変動サイクルにあわせて大きく膨らんだり、また急激な縮小を繰り返すことになります。
これに対しマネージド・フューチャーズは、株やコモディティと異なり、短期的に大きなリターンを期待することはできません。
それでもいままでみてきたように、景気のサイクルに引っ張られることはありませんので、一定量資産に組み入れた場合、
資産全体の膨張と収縮の波を小さくする効果はあるといえるでしょう。

ではマネージド・フューチャーズに欠点はないのでしょうか、次はその点について考えてみましょう、
マネージド・フューチャーズは上記のように株やコモディティなど、景気サイクルの影響を受けることはあまりありませんが、
言い換えればこれは例えば2009年の4月以降のような景気回復期に、必ずしもリターンを期待することができない
ということでもあります、事実ADPやWDFPの2009年の月次別実績をみますと、いずれもマイナスで推移しています。

この間のマネージド・フューチャーズの不振の原因は、2009年3月に株やコモディティが下落から上昇に転じる
大きなトレンドの反転があったこと、あるいは債券や為替で明確なトレンドが出なかったからだったといえるでしょう
。 2009年は、2007年以降市場参加者を支配し続けた不安が徐々に解消にむかった年でしたが、
なにしろあれだけの景気後退に見舞われた直後ということもあり、市場参加者は今後の世界経済に対し、
まだまだ自信を持つには至りませんでした。参加者は日々発表される経済指標に一喜一憂を繰り返し、
相場は小刻みなフレとともに神経質な動きを繰り返すことになったわけです。これはある意味、景気が後退から
回復へ向かう過渡期にみられる典型的なパターンだともいえるのですが、同時に多くのトレンド・フォロー型の
マネージド・フューチャーズにとって、最も不得手とする相場の形状でもあったわけです。

このように株やコモディティが大きく回復する過程において、マネージド・フューチャーズは年間を通して
マイナスを記録したという事実も、また記憶にとどめておくべきではないでしょうか。


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