■商品相場の上昇を利用して資産を増やす(その4)
またその問題とは別に、もう一つ金融システムを不安定にする問題が私たちの目の前に現れました、それは長らく続いた米国による覇権に陰りがさしはじめたという、ある意味でやっかいな問題です。歴史の必然でしょうか・・・かつての世界の大国であった中国が、いよいよ200年にも及ぶ長い眠りから目覚め、いま彼らの定位置であった世界の超大国の位置を目指そうとしています、おそらくその過程で彼らは世界経済のパンドラの箱を開けることになるでしょう。中からいったい何が出てくるのか・・・それを予想することは難しいですが、少なくとも現在の米ドル基軸通貨体制は大きく変化することになるでしょうし、さまざまなコモディティの相場にも大きな変化が生まれるのではないでしょうか。
長らく続いた米ドル基軸体制は、一朝一夕に終焉するとは考えにくいですが、それでも長い時間をかけて、新しい通貨基軸が徐々に醸成されてゆくことになるのではないでしょうか。それが既に存在するどこかの国の通貨になるのか、それとも米ドルを含む通貨バスケットになるのか、はたまた全く新たな通貨単位が生まれるのか・・・それは私の予想を超えた世界のお話ですが、すくなくとも今後長い年月をかけてそのような動きがでて、その都度金は投資、あるいは投機の対象として注目を集めることになるのではないでしょうか。
一方で同じ貴金属でもプラチナは、全く異なった性格を持っています。プラチナも、確かに一部貨幣として用いられていますので、その点においては金と同じく通貨の代替機能は持っていることになるのですが、一方でプラチナの用途をみますと、金とは明らかに異なっていることが解ります。
金の用途
1.宝飾需要(57.5%)
2.金隗として退蔵(10.2%)
3.ETFを含む投資用(8.6%)
4.エレクトロニクス用途(7.8%)
5.公的コインへの加工用途(5.1%)
注)GFMS/Gold Survey 2009より抽出した2008年度データ
プラチナの用途
1.自動車触媒(60.0%%)
2.他の産業用途(27.7%)
3.宝飾需要(21.5%)
4.ETFを含む投資用(6.7%)
5.在庫変動等による調整(-15.9%)
注)Johnson Matthey/Platinum 2009より抽出した2008年度データ
金の用途が宝飾需要と金隗やETF、コインなど投資的用途が中心で、産業分野で使用される比率が低い一方で、プラチナをみますと逆にその大半が産業用途、しかも自動車の触媒で占められていることが解ります。つまり大雑把に申しますと『金は宝飾と投資、プラチナは産業用途』といってしまってよいでしょう。このような両者の性質の違いが、2008年のリーマン・ショック以後の値動きに如実に表れることになります。
(2006年9月~2011年9月までのドル建てプラチナ相場の動き kitco サイトより)
ご覧のようにプラチナは金と違って、リーマン・ショックを挟んで急落していいます。このようなプラチナの特異な性質は、今後のプラチナ相場を予想するに際し、大きなヒントになりえます。
さらにさかのぼって過去の金とプラチナ相場を比較してみますと、興味深い事実が見えてきます。
(直近38年間の銀価格推移:弊社作成)
注)いずれも年間の金とプラチナの平均価格をベースに作成
注)2011年データは2011年8月30日数値を使用
上記はプラチナの価格を金の価格で割った値の推移です、横軸は西暦で左端の73は1973年を示しております、直近38年のデータですが、このチャートをみますとプラチナを金の価格が上回ったのは1975年、1981年,1982年の3度しかなく、これはまれな状態であることがわかります。つまりプラチナは金の価格を下回りにくいという性質をもっているわけです。これに対し現在(2011年9月始め)の金/プラチナ比率をみますと1を切っており、これはプラチナが金より安いうという逆転現象にあることを示しております。この逆転現象は、今後の景気後退懸念と、世界的な金融不安に対する懸念の表れといってよいのではないでしょうか。
以上さまざまなコモディティの中でも、金とプラチナについてピックアップしてご説明して参りましたが、ここまでお読みいただいてお解り頂いたように、コモディティと一口でいっても、さまざまなものがあり、それぞれに異なった性質、異なった値動きを示します。金やプラチナ以外にも主だった投資対象として、アルミニウムや亜鉛、銅などベースメタル、小麦やトウモロコシ、大豆などの穀物、原油や天然ガス、ガソリンなどのエネルギーなどが私たち個人の投資対象になってきます。これらコモディティを資産ポートフォリオに組み入れる方法はさまざまあるのですが、その具体的手法につきましては第三章『資産運用の実戦』で詳しくご紹介いたします。第三章ではコモディティに限らず、本章で既にご説明した新興国株やマネージド・フューチャーズなどについても具体的にご紹介させて頂きます。
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