■新興国株をどう組み入れるか(その2)
1.まず新興国分散型銘柄を一つ購入する
新興国は高い経済成長が期待できる半面、先進国ではあまりみられないリスクを想定しておく必要があります、例をあげればカントリー・リスクとよばれる一種の信用リスクです。中国は共産党による一党独裁の国で、一握りに共産党の指導者の判断で大きく国策が左右される傾向があります、現在のところ中国共産党の指導者の資質は高そうにみえますので、当面そのような心配は必要ないと思いますが、それでも例えば周辺国との軍事的な衝突や、大幅な経済政策の変更など、経済や株価に大きな影響を及ぼす事態が起きらないとも限りません。ロシアにしても同様の政治リスクが常に付きまといます。一方でブラジルやインドは比較的長期にわたって民主主義が根付いていますので、少なくとも政治的なリスクはそれほど大きいとは思いません。が、例えばブラジルは1980年代から1990年代前半にかけ、極めて激しいインフレを経験するなど、経済的に不安定な時期が続いた国です。現在の同国の経済状態は良好ですが、このような客観的事実を投資の材料として織り込んでおくべきではないでしょうか。
このような新興国が抱えるカントリー・リスクを避けることは基本的には不可能ですが、多くの国に幅広く投資することにより、そのリスクを分散させることは可能です、そのような観点で新興国株ETFをみますと、例えば下記のように投資対象を広く分散させた銘柄が、最初の投資対象としてはふさわしいのではないでしょうか。
1-1.i Shares MSCI Emerging Markets Index Fund
1-2.Vanguard Emerging Markets ETF
1-1はBarclayが運用する新興国株ETFで、モルガン・スタンレーが算出するMSCI新興国株指数への連動を目指すファンドで、信託報酬は年0.74%となっています。1-2はVanguardが運用する新興国株ETFで同じくMSCI新興国株指数連動型ですが、こちらは信託報酬がさらに低く、年0.27%に抑えられています。信託報酬だけみますと1-2のほうが有利にみえますが、実際にはどうなのでしょう。
1-1.i Shares MSCI Emerging Markets Index Fund
◆直近1年間実績(-1.01%)
◆直近3年間実績(29.75%)
◆直近5年間実績(5.50%)
1-2.Vanguard Emerging Markets ETF
◆直近1年間実績(-1.03%)
◆直近3年間実績(32.37%)
◆直近5年間実績(5.98%)
(注)上記データはいずれも運用会社のウエッブサイトに開示された2012年3月末日時点のものです。
両ETFのパフォーマンスを比較してみますと、やはりVanguardの成績が勝っていることがわかります。ETFの銘柄を選択する場合、過去の運用実績の違いといった視点もさることながら、ファンドの流動性を左右する運用資産総額や出来高に注目しておくべきだと思います。もちろん資産運用総額が大きいほど流動性は高くなると考えてよいでしょう。特に新興国株ETFは価格変動リスクが大きな金融商品です、相場の急落に見舞われた場合、流動性の多寡は大きな意味をもつことになるでしょう。ご参考までに2012年3月14日時点の両者の運用資産総額は下記の通りです。
i Shares MSCI Emerging Markets Index Fund(409億ドル)
Vanguard Emerging Markets ETF(691億ドル)
つまり運用成績、流動性いずれにおいてもVanguardが勝っているといえるでしょう。
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