■過去から学ぶ商品高
みなさんこんにちは。
将来は必ずしも過去の繰り返しではありませんが、
過去のなかに何らかのヒントを学ぶという意味で、
過去を振り返るの作業は、決して無駄ではないと
私は思っています。
『投機マネー世界を揺らす』
『原油一時100ドル、米にインフレ懸念』
『各国、金融政策難しく』
これは日本経済新聞の見出しですが、実は最近のものではなく、
リーマン・ショックの年、すなわち2008年の1月4日付の
ものです。
記事の内容はといいますと、
『ドル安や金融市場の混乱を背景にマネーが株式、債券
など金融資産から原油、金、穀物など現物資産に移る大きな流れが
加速している』
で始まり、サブプライム問題で信用を失った金融商品から
現物資産の代表であるコモディティにマネーが大量に流入する
様子が紹介されています。
ご参考までに当時の各商品の価格は概ね以下です。
・WTI原油 100ドル/バレル前後
・金 860ドル/トロイオンス前後
・CRB指数 360前後
・大豆 12ドル/ブッシェル前後
・銅 6500ドル/トン前後
ちなみに当時の円ドル相場は1ドル=108円前後でした。
世界の経済は前の年、すなわち2007年の半ばあたりから
落ち着きを失い始めており、株式相場も既に2007年後半から
下落基調に入っておりました。
景気の判定は各国独自の基準で行いますが、基本的に
景気の山と谷の判定は、1年〜数年程度経過後に行われます。
従って景気の後退期入りの初期段階では、当然明確な後退期入りの
判断は下されておらず、市場参加者は、日々公表される経済指標や
企業業績などを総合的にみながら、独自の判断のもと投資行動を
とらざるを得ないわけです。
いまから当時を振り返りますと、2007年末から既に世界の景気が
後退期に入るなかで、先ほどの記事にあるような商品相場の急騰に
違和感を覚えますが、商品相場への参加者は、以下のような理由で
「コモディティ買い」の意識を共有していたのではないでしょうか。
1.当時世界の経済は意外と底堅いとの認識があった
2.サブプライム問題で信認が揺らいだ金融商品に対し、
実体のあるコモディティは信頼性において優れる
3.サブプライム問題はあっても一時的なことで、今後も新興国の
経済成長は続き、長期的にみて国際商品相場の上昇基調は変わらない
結局この後も「コモディティ買い」は、その後7カ月の長きにわたり続き、
下落し続ける株価を横目で見ながら、商品相場は上昇し続けることに
なります。
時価総額が株式に比べ極端に小さな商品市場は、僅かなマネーの
流入で大きく上昇致します、大半の参加者が徐々に安全志向を強めるなか、
ごく一部の参加者によって商品相場は牽引され続けたといえる
のではないでしょうか。
そして限界を超えた商品相場の上昇は、既に後退局面にあった
世界経済の下降に拍車をかけました。
その帰結が皆さん良くご存じのリーマン・ショック時の暴落で、
さらにその半年後にCRB指数は高値の40%に沈みます。
リーマン・ショックの直接的な原因が商品相場にあるとは
言えませんが、そのの異常な振幅が一因であったことは
間違いないでしょう。
私たちはこの間の特異な商品相場の動きを記憶しておくべき
ではないかと思いますし、私自身ここから得られた以下のような
教訓は大切にしたいと思います。
・商品相場の急騰は景気に悪影響をあたえ、継続的な商品相場の
上昇は景気後退を招く恐れがある点
・景気回復から後退への転換点は判然とせず、そのサインは
しばしば見落とされることがある点
・景気後退期に商品相場は上昇し続けることがある点、そしてその上昇
の間に蓄積された市場の歪(ひずみ)は、商品相場下落とともに
解消されることになるという点
・やがて景気は反転期をむかえ、商品相場も上昇に転じる点
先日のメルマガ『次の景気後退のトリガーは』で書かせて頂いたように、
次回の景気後退までまだ多少の時間的な余裕はあると私は思っています。
ただ商品相場の高騰によって、徐々に世界経済は歪を
蓄積しつつあるようにも思います、今後の経済と国際商品市況の
行方には大きな関心を持ってみておく必要があるのではないでしょうか。
次の景気の転換点でも運用の成果を手にするために・・・
では、今回はこのへんで。
(2011年3月8日)
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