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■サイクル性資産と非サイクル性資産(その2)

2008年のリーマン・ショックの解釈は人によっていろいろ異なりますが、
例えば一つの見方として2007年末に始まった世界同時景気後退のなかで起こった
必然という言い方もできるのではないでしょうか、
リーマン・ショックそのものは2008年9月に起きましたが、
先ほど申しましたように世界経済はすでに2007年末に後退を始めていました。
通常景気の回復期には、不良債権問題への関心は薄れがちになりますが、
これは我が国の1998年から2003年の状況をみるとよく解ります。
1998年当時激しい金融不安に見舞われ、市場の関心は金融問題に集中していましたし、事実数多くの金融機関が破綻しました。
ところが幸いにも当時米国で起きたITバブルの恩恵をうけ、我が国の景気は1999年以降一時的に回復に向かいました、
ご参考までに当時の経済状況を確認しておきますと、1999年1月が景気の谷で、
そこから22ヶ月間景気回復が続き2001年1月が景気の山となっています。
つまり1998年の金融危機は米国のITバブルによって救われ、2001年1月まで続いた景気回復によって「危機が繰り延べられた」、
このような言い方もできるわけです。ちなみに我が国金融問題が再び顕在化するのは、その後2002年〜2003年前半にかけてで、
最後は竹中さんと小泉さんの決断(りそな国有化)により、この問題はようやく本質的な解決をみたわけです。

リーマン・ショック後にとられた日米欧を中心とした経済対策で、本当に一連の金融危機は去ったのかどうか・・・
その点は大いに疑問が残ると私は思っていますが、リーマン・ショックがあろうがなかろうが、
2007年〜2008年にかけての世界同時株安は、景気後退期の一現象として起きるべくして起きていたはずです、
もっともリーマン・ショックによって、その下落幅はより大きなものになりましたが。

仮にその時期に株やコモディティなど、景気サイクルに大きく依存する金融商品を大量に持っていれば、
どのような結果になったかここで申しあげるまでもないでしょう、
いくら長期投資と割り切っていても、例えばロシア株が一年で4分の1になってしまえば、
その時点で資産運用そのものをやめてしまう人もいたはずです。
一方で金やマネージド・フューチャーズに一部の資産を分散していた人は、
その保有割合に応じ、被害の程度はより軽いものになりました。

先ほどご紹介したように、我が国の経験に照らし合わせてみますと、金融危機というものは一筋縄では解消しないことが解りますし、
仮に経済の回復によって一時的に解消したように見えても、実は水面下で火種がくすぶり続けている場合があることが解ります。
私は2009年末に起きたドバイ・ショックやその後のギリシャ問題などをみて、2008年の金融不安はまだまだ片付いてはおらず、
水面下で依然くすぶり続けていると感じました。
ただ一方で、我が国の状況と欧米の状況は多少異なる点も冷静にみておく必要があるでしょう、
我が国の金融機関の収益性は極めて低く、期間収益で潜在的な不良資産を積極的に償却してゆくにはかなりの期間が必要です、
一方で欧米の金融機関はどうでしょうか、少なくとも収益性の点では邦銀より高く、「繰り延べられた」期間の収益で、
潜在的不良債権を比較的短期のうちに償却することも不可能ではないでしょう。

現在進行しつつある景気回復がどの程度の規模なのか、あるいはどの程度の期間続くのか・・・
私はその点が非常に重要だと思います。
比較的短期で終わるようなことがあれば、次の景気後退期に第二第三のリーマン・ショックは起こりえるでしょうし、
その規模によっては再び世界の金融システムが動揺にさらされるリスクも想定しておくべきでしょう。
また幸いにそのような大きなショックが当面ないとしても、景気サイクルそのものは、
これからも人間の経済の営みが続く限り、永遠に繰り返されるでしょう。
そしてその都度個人投資家の多くは挫折を味わい、なかには資産運用を諦めてしまう人もでてくるに違いありません。

そういう意味で景気サイクルの影響を受けにくい金融資産を、今のうちから探しておくことは意義深いことではないでしょうか。


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