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■長期投資とサイクル投資、どちらを選択すべきか

新興国株のように高い成長性と、激しい価格変動が共存する資産を保有する場合、大きく分けて二つの考え方があると思います。まず一つ目は「長期投資」という考え方です、基本的に株は景気の変動に沿って大きな上下動を繰り返しますが、例えば新興国株のような成長資産の場合、このような上下動を繰り返しつつも、長い目で見れば右肩上がりでその価値は上昇してゆくはずです。さらに我が国の高度成長期の企業業績をみても解るように、一般に高成長国の企業業績は、より速く拡大する傾向にあります。その理由は、高成長国においては、より速く内需が拡大することにより、国内での売上増加の恩恵を受けやすいということがあるでしょう。さらに一方で人件費を中心に製造コストの面でも、先進国企業にくらべ高い輸出競争力を当面は維持できるということもあるでしょう。つまり内国消費、輸出の両面で一時的に大きなメリットを享受できるというわけです、このような理由で新興国の企業業績はより速く拡大し、結果として新興国の株価もより速く上昇するといえるのではないでしょうか。

先進国に住む私たちは、恐らく今までのようなスピードで経済成長を続けることは難しいでしょう、しかし先進国に住みながら自らの資産を新興国に投じることにより、新興国の成長とリンクして資産を増やすことは可能です。要するに意識的に自らの資産を、新興国の成長と同期させることにより、自ずと彼らの成長が私たちの資産を増やしてくれることになるわけです。さらにその新興国株が長い目で見て右肩上がりで上昇するなら、下手に売買などせず、ずっと保有し続けるほうがよほど賢明だ・・・この考えがまさに「長期投資」の原点ではないでしょうか。

一方で「長期投資」には欠点もあります、例えば2003年以降の香港H株のをみても明らかなように、かなり幅の大きな上下動がみられます。例えば前回の株価ピーク時(2007年11月)以降の香港H株指数をみますと、20,609ポントの史上最高値から2008年10月の5,000ポント割れまで急落していますが、この間の下落率は実に70%を超えています。このような急落は投資家の心理に大きな負荷をかけることになるわけですが、いってみればそれが「長期投資」によって利益を得ることの対価といえるのではないでしょうか。

さらに「長期投資」にはもう一つの欠点があります、それは第一章でもお話しした入口と出口のタイミングです。例えば先ほどの香港H株に2007年夏に投資したとしましょうか、皆さんが中国株の成長を先読みし、しかもその考えは正しかったにも関わらず、皆さんはその数カ月後に散々な目に遭うことになるわけです、しかもその含み損はいまだに解消していません。逆に出口を誤った場合も、同様に大変厳しい結果が待ち受けていることになります。このような入口や出口のタイミングによる収益のブレは、積立投資や逆に定期売却によって回避することができますが、それによって保有中の皆さんの資産価値そのもののブレを回避することができないのは第一章でご説明した通りです。まさに「長期投資」は「短期の価格変動に耐え、投資対象の本来的なリターンを取りに行く」行為といえ、高度な忍耐力と弛まぬ努力によって初めて実現する投資手法といえるでしょう。


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