■マネージド・フューチャーズとETF(その2)
この対極にあるのがちょうどETFではないでしょうか、ETFには「個別銘柄の選択からは、決して市場の平均を上回るだけのリターン(これを超過収益といいます)を得られないという考え方が根底にあります。言い換えれば、市場は『効率的』であり、いくら頑張って
銘柄を選択しても、(売買手数料などのコスト控除後でみると)市場の平均には決して勝てないという思想がベースになっているわけです。
世間ではコストやリスクについて議論される事が多いのですが、両者の違いは実はそのような表面的なところにあるのではなく、市場を効率的(均一的)とみているのか、市場に歪みがあるとみているのか、このように根本的な発想の原点に違いがあるわけです。もし市場を『効率的』とみるなら、ヘッジファンドの存在意義はありません、逆に市場に『歪み』があると考えるなら、多少コストを払ってでも、ヘッジファンドを購入する意味はあるでしょう。
さてこのヘッジファンドとETF、それぞれに魅力と欠点があります。例えばヘッジファンドの場合は透明性や流動性において難があり、時には突然解約停止措置をとったり、場合によっては流動性の低い資産を分離し、一般的にサイド・ポケットと呼ばれる別のファンドを設定したりというケースもみられます。また概ね3%~5%程度の高い購入手数料や、20%程度の成功報酬(注)を設定するなど、一般のファンドに比べ高いコスト負担を求められることにもなります。一方第二章でご説明したように、例えばマネージド・フューチャーズと総称されるファンド群は、株やコモディティが大幅に値を下げた2008年を通して、過去の平均的リターンを上回る収益を上げるなど、経済環境に左右されず絶対的なリターンを保有者にもたらしてくれる可能性があります。
(注)成功報酬:ヘッジファンドは一般的に、運用成果に対して20%程度の成功報酬をとる。例えば500万円の投資額が600万円に増えた場合、その増加額100万円に対して20%、即ち20万円をファンドから控除することになる。通常ヘッジファンドの過去の運用成績は、これら手数料を控除した実績をベースに算出している。
これに対しETFはといいますと、もちろんよく言われるようにコスト面では、購入手数料、保有中の手数料(信託報酬)ともに圧倒的に低く、大変有利な商品と言えるでしょう。またETFは基本的にインデックスを参照しながら、投資対象を組み入れているに過ぎず、その点では透明性、安全性ともに高いと考えてよいでしょう。このようにコスト面、安全面において大きな長所がある一方で、ETFはあくまで参照するインデックスをなぞっているだけで、基本的には景気のサイクルや、2008年の金融ショックのような外的ショックから逃れることはできません。
皆さんが資産運用にヘッジファンドを採用するか否かの判断は、要するに市場を『効率的』とみるか否かという判断でもあるわけですが、私自身の考えを申し上げるなら、市場は決して『効率的』だとは思いません。むしろ市場は人間の欲望や恐怖によって極端から極端に揺れ動くという意味で、『歪み』に満ち溢れた世界だと思っています、その意味において皆さんのポートフォリオに、一定のヘッジファンドを組み入れる意味はあるでしょう。
しかしながら第二章でもご説明したように、ヘッジファンドならなんでもよいという考えは間違っているとも思います。平時では機能していたヘッジファンドが、例えば2008年のような厳しい経済環境のもとでは全く機能せず、株やコモディティ、不動産など他の資産と連れだって下落してゆくという現象を私は目の当たりにしてきました・・・このようなことではヘッジファンドを持つ意味はありませんし、そこに高いコストを支払うのは無駄以外の何ものでもないでしょう。そのような観点で、現在のヘッジファンド市場を見渡してみますと、既に第二章で申しあげましたように、私たち個人投資家が比較的容易に、しかも手の届く範囲の金額で購入できるヘッジファンドとして、やはりマネージド・フューチャーズを中心に考えておいてよいのではないでしょうか。
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