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■新興国株ファンドと為替

ETF経由で新興国株を組み入れる際、意外と見落とされるのが為替に関する問題です。
例えば先ほどご紹介したようにマネージド・フューチャーズの場合、基軸通貨(注)が仮に米ドルであっても、必ずといってよいほどクラスごとの通貨(例えば豪ドル建て、ユーロ建てといった)に為替がヘッジされていますから、米ドルの下落不安から解放されることになります。

注)そのファンドが運用に際して用いる通貨で、マネージド・フューチャーズの場合は通常米ドル。

では例えば新興国の株式指数に連動するETFで、米ドル建てで値付けされている商品の場合はどう考えるとよいのでしょうか。

例えばさきほどご紹介したi Shares MSCI Emerging Markets Index Fund(EEM)は、表面的には米ドル建てで値付けされているのですが、仮に皆さんがこのETFを購入した場合、米ドル建て資産と考えるべきなのでしょうか。

確かにこの商品がインデックスとして使っている、MSCI Emerging Markets Index は米ドル建てで計算されていますが、実際に組み入れている株式は、インドや中国、ブラジル、ロシアなど新興各国の現地通貨建てで、しかも現地通貨と表示上の通貨である米ドルとの間で、為替ヘッジはかけていません。

従って皆さんがこのETFを資産に組み入れた場合、新興国通貨が米ドルに対して強くなりますと、それがストレートにこのETFの米ドル建て価格上昇という形で、皆さんの資産価格に反映されることになります、『為替のヘッジ』を行っていないということはそういう意味です。

要するに表面的には米ドル建て資産ではありますが、実際には(為替ヘッジをかけていないという意味で)、新興国通貨をまんべんなく組み入れたのと同じ効果があるわけです。

ではもう一歩進めて、下記のETFはどうでしょうか。

Lyxor ETF MSCI Emerging Markets

このETFはソシエテ・ジェネラル系のLyxorが運用するMSCI Emerging Markets Index連動型のETFで、米ドルクラスに加え、ユーロクラスと英国ポンドクラスがあります。参照するインデックスは、先ほどのEEMと同じく、MSCI Emerging Markets Indexなのですが、こちらはユーロ建て、ポンド建てがあるわけです。

では仮にこのETFのユーロ建てクラスに投資した場合、皆さんはどの通貨を保有したことになるのでしょうか。このETFの目論見書を読んでみますと、下記のように書かれています。

1.MSCI Emerging Markets Indexは米ドル建てで設定されているが、実際には組み入れ対象株の現地通貨と、米ドル間の為替変動のリスクを受ける。

これは上記EEMと同じ仕組みですね、現地通貨と米ドルの間に為替ヘッジが行われていないということ、つまりは実際には現地通貨を保有するのと同じ効果があるということです。

2.MSCI Emerging Markets Indexが計算される米ドルと、ユーロの間の為替変動リスクを受ける。

これはどういう意味でしょうか。要するに上記1のようにして計算されたMSCI Emerging Markets Indexに対して、このユーロ建てクラスは為替ヘッジされていないということ、つまりは米ドル・ユーロ間での為替ヘッジが行われていないという意味です。

ちょっと頭が混乱してしまいますが、上記1と2をまとめますと以下のようなイメージになります。

1)まず現地通貨(中国やインドなどの新興国通貨)建てで運用されている
2)続いて1)を合成して米ドルに換算し、米ドル建てクラスを組成する
3)さらに2)をユーロに換算してユーロ建てクラスを組成する

2)と3)の過程で為替ヘッジは行いません、つまりは米ドル建てクラスであろうとユーロ建てクラスであろうと関係なく、実際には新興国通貨をまんべんなく組み入れるのと同じ効果があるわけです。従って私たち日本人にとって、わざわざ後者のユーロ建てETFを購入する意味は(少なくとも為替という観点からみると)ないということになるわけです。


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