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■終わりに

よく『一世代30年』といわれますね。

これはごく大雑把に言って「人間は平均で30歳のとき、次の世代を生きる子供の親になる」ということでしょう。

このこと・・・深く考えてゆきますと結構面白いですよ。

例えば明治維新のころは、ざっと今から140年ほど前ですから

140÷30≒4.7

で私たちの4世代前の人たちが生きていたことになります。

では4世代前の私たちの祖先は、私たち一人ひとりにとって、それぞれ何人いるのでしょうか。

1世代前は2人。
2世代前は4人。
3世代前は8人・・・

これを算数っぽく書きますと、2のn乗(nはさかのぼる世代数)ということになり、4世代前ですと2の4乗で16人ということになります。

言い換えれば、「私たち一人ひとりに対し、明治維新を生きた祖先が16人ずついる」ということです。

もっと言えば、その16人のうち一人でもいなければ私たちはこの世に生れていないし、16人のうち一人でも別のひとであったなら、今ここにいるのは私たちではなく、違う個性をもった別の人であったということになります。

このお話し・・・さかのぼってゆくと、もっと面白くなってゆきます。

例えば関ヶ原の戦いがあった西暦1600年、いまからさかのぼることざっと400年ですが、この時代を生きた私たちの祖先は何人いるでしょうか。

まず世代数の計算です。

400÷30≒13.3

従ってこの400年で13世代ほど進んだことになります。

13世代前の祖先の数は、2の13乗で8,192ですので、ざっと申し上げて皆さんお一人お一人に対し、約1万人のご先祖が関ヶ原の戦いの時代を生きていたということになります。

その1万人のなかには歴史上有名な人物もいたでしょうね。なかには徳川家康や上杉景勝といった武将も混じっているかもしれません・・・こんなことを考えていると私などはワクワクしてきます。

ではさらに300年ほどさかのぼってみるとどうでしょう。今から700年ほど前といえば西暦1300年ごろ、鎌倉時代末期で元寇があった時代あたりです。

700年前といえば、おおざっぱにいって23世代前ですからご先祖様の数は2の23乗で8,388,608人、およそ800万人ということになります。

恐らく当時の我が国の人口も、ちょうどこの程度だったのではないでしょうか。

もちろん先祖がどこかでダブッている場合が多いでしょう。でもごく大雑把にいってしまえば、現在を生きる全ての私たちと、当時の全ての日本人は何らかの形で血がつながっている。このようにいえるのではないでしょうか。

このように考えてまいりますと、私たち一人一人は実に大きな潜在的な才能を、みな等しく先祖から受け継いでいるのではないかと思えてきます。

人は生まれ、そして年をとってゆきますが、もしかすると私たちの大半は、その隠れた才能に気づかないままに一生を終えてしまうのかも知れませんね・・・

もちろん若いころに自分の才能に気づくことは、とても大切なことだと思います。でもいくつになっても自分のなかの隠れた才能をみつけることはできますし、それを開花させてあげることも不可能ではないと私は思います。

私たちはそれだけのDNAを先祖から受け継いでいるのですから・・

またよく「あの人は運がいい人だ」とか、「オレは運の悪い男だ」といった言葉を耳にしますが、本当に運のいい人や、運の悪い人などこの世にいるのでしょうか・・・

私はその昔よくマージャンをしましたが、マージャンはツキの流れを知るという意味で、実に興味深い機会を与えてくれます。

マージャンをしていますと、ツキというものは規則正しく一定の期間をおいて訪れるというものではなく、不規則にしかも連続して訪れることがよく解ります。

ある人が上がりはじめると、まるで何かに憑かれたように上がり続けますし、逆に一度手が悪くなりますと、どんどんハマッてしまい、いつまでたってもそこから抜け出せない。

このように理屈では決して説明できないようなことが実際に起こります。

自然界に目を移しても、このような不規則性、連続性を私達は時々目にすることがあります。

例えば夜空に輝くお星様・・・

小学生が描く夜空の星は、よく規則的に一定の間隔に並んでいがちですが、実際の星は決してあのように規則正しくは並んではいませんね、ある一角は密度が高く、ある一角はほとんど何も見えずただ暗いだけだったりします。あるいは近隣の星を結んで私達が夜空に星座を描くのは、星が不規則に並んでいるからだともいえます。

また例えば幼い頃に遊んだビー玉、手にいくつものビー玉を握りしめ、エイと砂のうえに投げてみると、ビー玉は決して均等には散らばらず、かならずいくつかのまとまりになって止まります。

星にしてもビー玉にしても、彼ら自身には意志はないはずなのに、なぜか均等に散らばらず疎の状態と密の状態ができる・・・私はこれがツキの正体なのではないかと思っています。

空に輝く星にしても投げるビー玉にしても、疎密はあってもその総量は同じ・・・

これをマージャンに当てはめると、浮き沈みはあるが長い間やっていれば4人に訪れるツキの総量は同じ、勝負の分かれ目はそのツキを生かせたか、見過ごしてしまったか、その点に尽きるということになります。

マージャンに限らず、これは私達の生活すべてについて言えるのかもしれませんね。

同じ境遇からスタートしても、ウォーレン・バフェットのように物心共に豊かになれる人もいれば、どこかの公園のテントで鬱屈した生活を余儀なくされる人もいる・・・

おそらく彼らほど長く生きていれば、疎の時期と密な時期はあっても、訪れたツキの総量にさして差はないはず。彼ら二人の人生を分けたのは、不断の努力と精進、そして運をつかまえようとする前向きな精神ではなかったでしょうか。

このように考えて参りますと、私達が幼い頃から勉強し、努力を重ねるのはみなに等しく訪れるツキをうまくつかまえるため、その一点のためという気もするわけです。

この「連続読みもの」で私は、資産運用法に関する解説に終始して参りましたが、私は資産運用でも仕事でも地道な努力なくして大きな成功はないと思います。

人間ながく生きていると運の総量は同じ、資産運用の成否は皆自分自身の努力にかかっていると思うわけです。これからの日本が再点火し、再び力強く成長してゆくためには、相当の痛みが伴うことになるでしょう。

ただ仮に日本にどのような将来が待ち受けていたとしても、私たちは斜陽化する日本と一緒に沈没するわけにはゆきません。仕事であれ、資産運用であれ自らの能力をフルに活用し、家庭や子どもたちの将来を守る義務があるのではないでしょうか・・・私たちは皆等しく先祖から受け継いだ能力を、しっかりと一人一人のDNAに刻んでいるわけですから。

おしまい・・・長らくご愛読いただきありがとうございました。3年にしてようやく完結いたしました。ばんざ~い!

2012年9月24日 完
(株)銀座なみきFP事務所 田中徹郎


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